●信者さんのおはなし
「180度の転換」

金光教放送センター
(ナレ)愛媛県伊予市に住む佐野冨士夫さんは、ビルメンテナンスや人材派遣をする会社の常務取締役を務める58歳の男性です。
結婚当初、佐野さんの奥さんは金光教の信仰をしていましたが、佐野さん自身は信仰することに否定的でした。
(佐野)若い時でしたんでお許しいただくとしてですね、非常に宗教をする方っていうのは、弱い人間だなというようには思っていました。ですから、宗教によって神様に頼るというのですかね、そういうことが嫌いなものですから、そういうことが信仰なんだろうと自分で思っていたんで、そういうことが非常に嫌だったですからね。
(ナレ)転機は転職によって訪れました。それまでコンピューターのソフトを開発する仕事をしていたのですが、支店が閉鎖されることになり、やむなく転職することになったのでした。初めて担当したのは人材派遣部門の仕事で、ホテルに派遣された100人以上のパートさんの仕事を管理するという、全く経験のないものでした。
(佐野)そのホテルの責任者の仕事っていうのは、ほとんど人間関係だけでやっているところがありまして、部下の人ともそうですけど、とにかく人間関係をうまくいかさなあかんっていうのが大前提にありましてですね。そのためにはコミュニケーションも取らんといけないと。ですから前の仕事からみますと180度違う仕事だったですね。あの人間関係に対して、ものすごくしんどかったですね。いつ辞めようかというようなことが続きましたです。
(ナレ)金光教の教会にお参りすると、先生が悩みを聞いてくれ、神様にお祈りをし、アドバイスをしてくれます。これを「お取次」といいます。仕事に行き詰まった佐野さんは、奥さんに強く勧められ、お取次を受けるようになりました。最初は抵抗がありましたが、次第にお参りせずにはいられなくなったと言います。
(佐野)金光教のお取次っていうのは信者さんと神様の間に取次者、先生がおられて、こちらからお願いして、先生が神様にお届けしていただいて、神様の意志をまた伝えてもらう、そういうことだと思うんですが、私の場合は何か問題が起こったら、ある程度自分で回答というか答えをもって行くんですね。その中で実はこういう問題があってこういうやり方で解決しようと思うんですけどって、先生からもまた意見を頂いて、それを何回かキャッチボールしていく中で、自分で分かってくるというか、気付かせてもらうんですね。
ただとにかくお話をさせてもらう、そういう問題の中で私自身も不満を持っている部分っていうか、はけ口としてそこでさせてもらったりして、そうなると割と気持ちが落ち着いてくるんで、それで何となく解決策っていうのが自分で分かってくるんかなあ、と思ったりもしますね。
(ナレ)仕事の帰りにお取次を受けるようになってからは、難しい人間関係の問題も解決していき、佐野さんにとって、お参りが自然なものとなっていきました。
(佐野)やっぱり仕事に行って帰りに教会に寄って、今日あったことをお話させてもらったりっていう、そういうような習慣というんでしょうかね、そういうものがありましたので、なんか安心感というのはありましたね、仕事していても。そういう生活になってましたから、頼るんじゃないんですけど、自分の中心の背骨になる部分っていうのが一つの信仰というですかね、それに変わっていったような気がします。
(ナレ)転職した当初は、ソフト開発の仕事に未練があった佐野さんでしたが、次第に、考えが変わってきました。当時を振り返って佐野さんは言います。
(佐野)結局大学を出て、就職をしてコンピューターの仕事をさせてもらっていたんですけど、あまり人付き合いが少なかったんですね。しなくても仕事が出来ていたということがあるんですけど。もともと私もあまり人付き合いがいいほうではなくて、しゃべり方も下手でしたから、そういうちょっと暗いイメージを自分でも持っているんですけど、今の会社に入ってホテルのほうで5年間勤めさせてもらったら、いろんな人間とお話しないといけないというのが出てきましてですね。自分なりに、仕事だからという前提があったんですけど、いろいろ話をしているうちに、なんか自分が明るくなってきたな。中で、ものすごく自分自身が変われていった。その5年間がものすごく充実していました。だから今の私があるのはその5年間があったからじゃないかと思えるぐらい、良かったですね。
(ナレ)嫌で仕方なかった転職が、お取次を受ける中で、とても価値のある体験に変わったのです。信仰の持つ力を身を持って実感された佐野さんは、その後、課長、次長、部長と昇進。そして10年目に取締役となり、今は多くの社員の先頭に立って仕事をされています。
時には会社を代表して取引先からのクレームに対応することもありますが、お取次という支えがあるだけに、どんな問題も乗り越えることが出来ます。
(佐野)まずお客様の所に出向いていく前に、『神様、お願いします』、別にその向こうに、分かってくれっていうんじゃなくて、『自分が誠意を持って話が出来ますように』っていう形でお願いさせてもらって行きます。意外と、それがうまくいっているんか知れないんですけど、割と分かっていただけるいうことが多かったです。それでうまくいって、納得していただいて、帰る時にまた神様に『ありがとうございました』と、させていただくんですけどね。そういうことが、ものすごく心強く感じます。
(ナレ)そう穏やかな表情で話される佐野さん。その笑顔には、信仰を支えにした、柔らかな強さが感じられました。