●先生のおはなし
「先を楽しむ」

兵庫県
金光教出崎教会
安部賢雄 先生
(ナレ)皆様、どんな朝をお迎えでしょうか。おはようございます。案内役の岩﨑弥生です。今日は、兵庫県・金光教出崎教会 安部賢雄さんのお話で「先を楽しむ」です。
(本文)皆様、おはようございます。
今日も新しい朝を迎えることができました。後期高齢者となった私、日々「歳を頂いていることを喜ぶ」ことに取り組もうとしているのですが、なかなか簡単なことではありません。痛いところを探すなと言われても、ついつい体の不自由さのほうに目がいきますし、余生等への不安も募らせることになりがちです。
一昨年の夏のことですが、たいへん暑かったせいもあり、私、少し体調を崩しました。それも結構長く続いたので、つい弱気になり、不安な心に襲われました。それである夜、妻に軽い気持ちで、「こんな調子じゃ、いつどうなるか分からん。明日を迎えられんかも分からんなあ」と、つい愚痴をこぼしたのです。
その途端に、「そりゃ、違うだろう」と心の中で言っている自分もいました。「明日も元気に朝を迎えよう。迎えさせてくださいだろう」と。本当にそうです。そして朝になったら、「今日も朝を迎えられた。ありがとうございます」と喜ばせてもらう。いつどうなるか分からんという不安な心より、命を頂いている今、一日一日を祝福して生きたほうがよほどいいわけです。
歳をとってまいりますと、奇跡というものが身近になるようです。例えば、髪の毛や歯があること、食べられること、話せること、歩けること、階段が上がれること、便所へ行けること、それら一つ一つが、言ってみれば奇跡のようなものです。奇跡に囲まれて日々生きている。たいへんなことです。そうとなれば、体がいろいろと不具合があっても、その中に喜ばせてもらうことを忘れないようにしなければと思います。
昨年の夏にも私、少し体調を崩しました。それというのもコロナ感染症に罹ってしまったのです。今は新型コロナもインフルエンザと同じ5類感染症となっておりますから、騒ぎ立てることはないのかもしれませんが、私にとって初めての感染で、「私もとうとうコロナになったか」といった気持ちになりました。
症状はせきや熱がありましたが、早く治療を受け、薬を服用したことでそう大したことにはなりませんでした。ところが一つだけつらい症状がありました。それはずっと吐き気があり、物が食べられない、何も味がしない。口から入る物は、妻が用意してくれた葛粉で出来たお菓子をお湯に溶かしたものぐらいで、それが1週間続いたのです。私としては、しんどいものでした。
そういう状態の時、たまたま私の長男が岡山県にあります金光教の本部へ参拝をしておりました。息子は私の状況を知っておりましたので、私の病気回復を神様にお願いしてくれました。そうしておりますと、息子の胸にふっと、「先を楽しめ」という言葉が浮かんできたというのです。息子はすぐに私に「大丈夫ということだと思うよ」と、そのことを連絡してくれたのですが、私はそれを聞いてまず驚きました。なぜこんな時に「先を楽しめ」なんだろうと思いました。何か、厳しさを感じるというよりも、あっけにとられたような感じです。
その時、私はとても先を楽しむような状況ではないのです。物も食べられず、ひいひい言っている、この先どうなるんだろうというような不安な心もある。でもそう言われますと、なぜかいっぺんに肩の力が抜け、不思議と元気な心が湧いてきます。神様にお任せしていけばいいのだという安心の気持ちも湧いてきました。自分がそのようにすっと受け取れることもありがたいことでした。
楽な気持ちでその後の療養をさせていただき、10日間ぐらいで良くならせていただきました。また、物を食べられること、健康がどれほどありがたいかを改めて分からされたのでした。
そして、先を楽しむことについても考えさせられました。私どもは生きておりまして、いつどういうことが起きてくるか分かりません。しかし、すべて起きてくることは先への準備と思い、神様に願い、お任せしていく中に、先を楽しむ余裕を持たせてもらいたいものです。そうなれば、心の中の助かりが広がっていくように思われます。
歳を重ねた今、過去を慈しみ、今を喜び、さらに先を楽しむ心を持たせていただきたいと願っております。
(ナレ)いかがでしたか。
安部さんのお話を聞いて、「歳をとってまいりますと、奇跡というものが身近になるようです」という言葉が、深く私の胸に刺さりました。歳をとるということは、失うことのほうが多いように思っていました。けれども、「今ある当たり前に思っていたことがそうではない、奇跡なんだ。奇跡に囲まれて生きている」とそんなふうに感じられたら、かえって満たされ、豊かな気持ちで生きられるのだと感じました。いや、生きているのではなく、生かされているというのは、こういう世界なのだろうと思わされます。
今日のお話で、ふーっと深く深呼吸。固く突っ張ってばかりいた気持ちが、すうっとしなやかになり、肩の力を抜いて、神様にお任せ。先を楽しみにする気持ちが生まれてきました。
