甲子園を目指して


●先生のおはなし
「甲子園を目指して」

金光教西大寺さいだいじ教会
小林昭一こばやししょういち 先生


 金光教の本部がある岡山県浅口市に、金光教の教えを基に造られた金光学園という学校があります。「人を大切に、自分を大切に、物を大切に」を合い言葉に、中高一貫での教育が進められています。私は2年前までその金光学園で高校野球部の監督を務めていました。
 幼い頃から野球が大好きだった私は、甲子園を目指して地元の強豪校に進み、幸運にもその夢を叶えることができました。その後大学、社会人と野球を続け、現役を引退した後は指導者の道に進みたいと考えました。金光教の教会の長男として生まれた私は、金光学園の野球部が練習環境に恵まれずに、甲子園にも出たことがないことを知っていましたので、自分の力で甲子園に連れていくという夢を描いたのです。そして、念願叶って金光学園で野球部の指導をすることになりました。
 高校のコーチを1年間経験し、強豪校との力の差を感じた私は、中学校の監督になることを願い出ました。中高一貫の利点を生かし、中学から育て、続けて高校まで指導をすれば、強豪校とも戦えると考えたのです。狙いどおりに中学の県大会で優勝し、そのメンバーの高校進学に合わせて、私も高校の監督に就きました。
 当時の指導法を一言で言えば、「俺についてこい」。自ら先頭に立って声を張り上げ、厳しい練習で勝利を目指しました。2年後、中高6年鍛えた選手達が高校3年生となって迎えた夏の県大会では、優勝候補に挙げられていましたが、残念ながらベスト4で夢は破れました。翌年、翌々年も県の上位に顔を出すものの、甲子園には届きません。周りの期待が高まる中、私は次第に心が塞ぐようになりました。この先また中学生から指導する気持ちにはなれず、高校から特別な選手が入学することも望めず、甲子園への道筋を描くことができなくなったのです。
 自分の力に頼った指導に行き詰まり、悶々と過ごしていた時、ある先生からのアドバイスを受け、毎朝、金光教の本部へお参りするようになりました。まさに苦しい時の神頼みでしたが、当時はそうせずにいられない心境でした。甲子園出場というおかげを求めての参拝でしたが、毎朝、心静かに神様に向かう時間を持っていると、段々と心が軽くなっていくのを感じました。すると、それまで自分の力で甲子園にと考えていたことが、ひどく思い上がった考えに思えてきて、人の話に耳を傾けるようになりました。また、それまでは自分一人で仕切っていた練習も、他の顧問と相談して任せることが出来るようになりました。
 部員との関わり方も、以前のような厳しさ一辺倒ではなく、会話を心がけるようになり、その結果、部内の雰囲気がとても良くなりました。加えて、経験豊かなトレーナーと、メンタルトレーニングの技術を持つ同僚の教員が、不思議なご縁でチームに関わってくれるようになり、以前よりも、はるかに充実した練習ができるようになりました。
 その成果は、平成23年の夏に突然現れました。春の県大会では2回戦でコールド負けをしていたのが、一試合ごとに勢いに乗り、遂に初の決勝進出を果たしたのです。相手は春夏連続甲子園を狙う県下一の強豪校。圧倒的に不利だと言われながら、選手達は臆することなく戦い、9回を迎えて3点をリードするという見事な試合を展開しました。残念ながら最終回に追いつかれ、延長戦で敗れてしまいましたが、その後甲子園でベスト4まで進んだ強豪校を相手に、特別な選手は一人もいないわが校が示した戦いぶりは大いに注目され、翌年の春には県内最多の新入生が入部するほどの人気を集めました。
 その後、私は両親が続いて亡くなったため、監督を引き、今は教会の御用に専念しています。最後と決めて臨んだ平成27年秋の大会では、選手達の頑張りのおかげで、県大会初優勝の喜びも味わいました。その後の中国大会で敗れ、又も甲子園には届きませんでしたが、23年夏も27年秋も、自分の力に頼った指導では、とてもあそこまで勝ち進むことはできなかったと思います。あのまま強引な指導を続けていれば、皆の心は離れ、私の心も折れていたかもしれません。いま振り返れば、あの毎朝の参拝は、神様が私を引き寄せられ、かたくなで狭い私の心を、柔らかく広いものに仕立て直してくださる為の時間だったとも思えるのです。
 私の後任の監督も、いま毎朝、金光教本部へ参拝しているそうです。現監督は私が最初に赴任した時の部員で、長年共に甲子園を目指してきた仲間です。金光教と関わりのない家庭で育った彼が参拝を続けるのは、自分の力で出来ることなど何一つないこと、そして神様に願うことで思いもよらないおかげが頂けることを知っているからだと思います。
 金光学園野球部には目標と目的があります。目標はもちろん甲子園出場。目的は、その目標に部員全員で力を合わせて取り組む中で、自分も人も共に成長し、世のお役に立つ人になることです。この目的をぶらさず、いつの日か目標も達成されることを、日々祈らせて頂いています。

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