●天地は語る
第4回「心行の勧め」

金光教放送センター
ナレ 「表行よりは心行をせよ」
これは、金光教の教祖、金光大神の教えの一つです。今日は、この教えについて、先生にお話をお伺いします。
聞き手 先生、こんにちは。これはどういう教えなんですか?
先生 「表の行い」と書いて「わぎょう」、「心の行い」と書いて「しんぎょう」と読みます。金光教の教祖は、真冬に水をかぶったりする水の行や、火の上を裸足で渡ったりする火の行、あるいは特定の物を食べない物断ちや断食など、目に見える、表に表れた特別な修行を、「表行」という独自の言葉で言い表されました。そして、そうした『表行』より、他の人からは見えない、心の行をするように勧められたのです。ところで、あなたはこれまで、何か修行をしたことがありますか。
聞き手 私は特別の修行をしたことはありません。ただ、私が小さい頃、父は心臓が悪くて倒れたことがありました。その時、神様に「好きなお菓子を食べませんから、どうぞ父を助けて下さい」と真剣にお願いしたことがあります。父の具合が良くなるまで、一カ月程。
先生 じゃあ、その一カ月、お菓子を食べるのを我慢したんですか?
聞き手 ええ、何とか。
先生 神様は、あなたが好きなお菓子を我慢したのと引き換えに、お父さんを助けて下さったのではないと思います。「お父さんを助けてほしい」というあなたの切実な願い、そのために好きなお菓子を我慢しようと思ったけなげさ、そんな純真な願いに、神様は応えて下さったのだと思います。
聞き手 一カ月だけですが、目の前で兄弟がお菓子を食べるのを見てるのはつらかったです。願いをかなえるために好きな物を断つ、というようなお願いは、自分には無理だなと思いました。無理に特別の修行をしなくてもいいのなら、気持ちが楽になりますね。
先生 金光教の教祖は、特別な場所で特別なことをする修行の代わりに、職場や家庭など、生活の場で修行することを勧めておられるのですね。それは、誰もが、いつでも出来る修行といえるでしょう。
聞き手 生活の場での修行って、具体的にはどうすることですか。
先生 教祖は、「人に不足を思わない」ことや、「物事の不自由を行」とすることを、誰にも言わないで行うのを、心の行の例として挙げておられます。
聞き手 誰もが、いつでも出来るとはいえ、人に対して不足を思わないというのは、随分難しいように思います。私自身、毎日のように、主人や子どもに対して「ああしてくれたら、こうなってくれたら」と、不足心を持ってばかりいますし…。
先生 昔も今も、人との間柄、人間関係が一番難しい、切実な問題ではないでしょうか。お互い不完全で、至らないところの多い人間なのに、ついつい他人の足らないところに目がいって、腹を立てたり、責めたりしがちです。こんな心の習性は誰にもありますから、人に不足を思わないようにするというのは、まさに心の一大修行とも言えます。
聞き手 確かにそうですね。
先生 私はよく、お参りされる方にお話しするんです。「自分自身の実際の有りようを見つめたら、欠点は多いし、能力も限られているし、人に対してもどれほどのことが出来ているだろうか。そんな足りないだらけの私でも、神様は丸ごと抱えて、お生かし下さり、慈しんで下さっている。そんなお互い同士なんだから、足りないところに心を向けるより、良いところを見つけるようにして、足りないところを補い合っていくようにしましょう」と。
聞き手 心の行と言っても、精神修養とは違うんですね。
先生 人を不足に思わない修行は、神様のいとし子である人間同士が、争わずに仲良く共に生きていく、そんな生き方を心掛けていくことなんです。
聞き手 では、物事の不自由を行とするというのは、どういうことですか。
先生 これは、思い通りにならない事柄に出遭っても、そこから逃げずに取り組ませてもらいましょう、ということです。先の人間関係でもそうですが、経済や健康といった面でも、自分の思い通りにならないことが多いですからね。
聞き手 そうですね。主人は飲食店をしているんですが、最近はお客さんが少なくて、いつも主人と愚痴ばっかりこぼしあってるんです。先日の大雨の日には、お客さんはたった一人だったんです。お店をやっていけるか、心配になってしまいます。
先生 心の使い方で言えば、こんな大雨の中、わざわざ来て下さったと思えば、一人のお客でもありがたく思えるのではないでしょうか。心配や不足の心を持ってお料理を作るのと、ありがたい思いで作るのとでは、料理の味も変わるでしょう。
聞き手 プラス思考ですね。
先生 思い通りにならない時、逆境の時こそ、物事をプラスに受け止めるように務めていくこと、それも心の行といえます。もっと言えば、そんな時、問題にばかり心が奪われ、心配や不安を大きくしてしまいがちですが、むしろ、恵まれていることに心を向けることです。例えば、健康で働かせてもらえること、店を借りられること、色々な食材を使わせてもらえることなど、人や物や神様の恩恵を十二分に受けている自分なんですね。そんな自分であることが分かれば、思い通りにならない事柄も不足・不安に思うことなく、乗り越えていけるのではないでしょうか。
聞き手 元気が出る教えなんですね。私も、少しでも心行が出来るように頑張りたいと思います。先生、今日はありがとうございました。
先生 ありがとうございました。
ナレ 「表行よりは心行をせよ」。今日は、この教えについてお伺いしました。
