シリーズ「天地は語る」第1回「たらいの水」


●天地は語る
第1回「たらいの水」

金光教放送センター


 (ナレ)「おかげはたらいの水である。向こうへやろうとすれば、こちらへ来る。こちらへ取ろうとすれば、向こうへ行く」
 これは金光教の教祖、金光大神こんこうだいじんの教えの一つです。今日はこの教えについてのお話です。

(聞き手)先生、おはようございます。
(先 生)おはようございます。
早速ですがあなた、たらいをご存じですか?
(聞き手)はい、何となく…。
桃太郎のお話で、おばあさんが川へ洗濯をする時持っていく、木で出来た大きなおけのようなものですよね。
(先 生)はい、そうです。その中に水を張り、洗濯物を入れズッと向こうへ押すと、水がたらいの縁に沿ってこちらへ返って来ますね。その反対に洗濯物を手前に引くと、今度は水がたらいの縁に沿って弧を描くように、向こうに戻って行きますよね。
(聞き手)たらいの中で洗濯物を押す、引く…確かに水の動きは手の動作とは反対方向に集まっていきます。
(先 生)そうなんです。理科の実験みたいな話になりましたが、その水の動く様子を見て金光教の教祖は、おかげを頂くコツを教えて下さっているのです。
(聞き手)先生、たらいの水のように、おかげを向こうにやるとこちらに来て、こちらに取ろうとすれば、向こうへ行くってよく分からないんですけど。「向こうへやろう」の「向こう」とは、相手ということですか?  
(先 生)はい。いい質問をしてくれましたね。「向こう」とは、相手と考えられますね。自分のことばかり考え、相手の分を取ってまで自分が得をしたいと思っていると、かえって人から疎まれ、信用をなくし損をすることがありますが、相手が良いように良いようにと相手のことを思っているとかえって、人から用いられ、結果、思っていた以上の成功を得ることがあります。その実例として真里さんという商売をしている方のお話をしましょう。
(聞き手)はい、お願いします。
(先 生)和紙を扱う真里さんのお店には、色とりどりの友禅紙、昔ながらの紺色や赤色の型染めの和紙などが着物の反物のように店に並べられています。とても目に美しく、通りすがりの人も足を止め、店に入ってゆっくり眺めてくれる、そんなお店です。
(聞き手)結構そういうの、興味あるんですよね。行ってみたいですね。
(先 生)はい、そう言って店に入って、和紙の小物などは買って行かれる方もいるんです。でも、和紙そのものはどのように使って良いのか分からず、興味がありながら、普通の紙の10倍もする値段の物を買う方は、なかなかいないそうなんです。
(聞き手)なるほど。
(先 生)商売繁盛を願いお参りしている真里さんに、私は、「お客様はあなたが引っ張って来たのではないんです。神様が引き寄せて下さった人なんです。自分がもうけようもうけようと思わずに、一人ひとりの方が喜ぶようにするにはどうしたら良いか分からせて頂きましょう」とお話しました。
(聞き手)「たらいの水」のたとえ話ですね。
(先 生)はい。そうしましたら真里さん、お客様が喜ぶ和紙を使った手作り教室を始めることを思い付きました。その教室の一つにくす玉作りがありました。
(聞き手)くす玉って、ひもを引っ張ると割れる物ですか?
(先 生)いろいろなくす玉がありますが、教室では簡単なパーツを30枚ほど組み合わせ、こんぺいとうのような形にするものを教えました。それは、和紙を使うことで着物と帯を合わせるような楽しみがあり、出来上がりも紙の配色で可愛らしくもシックな感じにもなるバリエーションが広がるものでした。
(聞き手)こんぺいとうの形の飾り玉なんですね。
(先 生)はい、そうです。くす玉は評判も良く、20名くらいの方が皆、奇麗に仕上げていきました。でもその中の70代の平井さんだけが仕上がらず、格闘していました。真里さんは、途中でやめないで出来上がりの喜びを感じて欲しいと思って、出来るまで根気強く、繰り返し教えてあげることにしました。普通2時間ほどで終わりますが、3時間が経ってもまだ出来ません。そうなると真里さんは、「材料費だけで講習料はもらってないのに」とか、「一人の人にこれだけ時間を掛けては商売として成り立たない」とか、だんだんイライラした気持ちになってくるのです。でも、「お客様は神様が引き寄せた人。大切にしなければ。たらいの水、たらいの水」と思い返し4時間の時間を掛け、とうとうくす玉が完成しました。その時の平井さんは少女のように輝いた達成感のある笑顔をしていたそうです。
(聞き手)そうですか。本当に良かったですね。
(先 生)はい。実はその後、平井さんが、「今までやってみたいと思いながら、自分は不器用で駄目だと思っていたのが、根気よく教えて頂いて出来上がった物を、人に差し上げたらとても喜んで下さり、うれしくて、この歳で新しいことが出来た喜びは格別です」と言って、その後も何度も店に来て下さり、くす玉の材料の和紙を大量に買ってくれたそうです。
(聞き手)それは、良かったですね。相手が喜ぶように、水を向こうにやったらこちらに来たんですね。
(先 生)ええ。でもそれだけではないんです。平井さんの娘さんがくす玉をもらい、その話をテレビ局にお勤めのご主人に話すと、ぜひ番組で取り上げたいということになり、お店や教室のことがテレビで放送されたのです。
(聞き手)そんなサプライズがあったんですか!
(先 生)はい。まさに神様のなさることは私たちの想像をはるかに超えていますね。
(聞き手)何かお話を聞いて元気が出てきました。先生、今日はありがとうございました。
(先 生)ありがとうございました。

(ナレ)「おかげはたらいの水である。向こうへやろうとすれば、こちらへ来る。こちらへ取ろうとすれば、向こうへ行く」
 今日はこの教えについてのお話でした。

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