親にものを言うように


●私からのメッセージ
「親にものを言うように」

東京都
金光教麻布あざぶ教会
松本信吉まつもとしんきち 先生


 あなたは「信心っていったい何だろう?」と思ったことはありませんか?
 金光教祖の教えに「信心といっても別にむずかしいことはない。親にものを言うようにすれば、それで信心になる」というものがあります。
 今日は、大学時代からの僕の親友のK君の話をします。今、僕も彼も58歳です。
 僕は都内の金光教の教会に生まれ育ち、徒歩20分のところにある大学に進みました。そしてテニスサークルに入りました。
 時は、バブル景気のまっただ中、大学生は夏はテニス、冬はスキーの時代です。
 K君と僕は大学のそのテニスサークルで出会いました。K君はひょうひょうとした性格で、人懐っこく、テニスは僕と同じぐらい下手くそで、「オレはハンサムで身長もあるのに、どうして彼女ができないんだろう」といつも自分で言っていました。確かに憎めない、いいやつなんですが、彼女はなかなかできませんでした。
 大学3年になると僕たちはサークルの幹部になりました。テニスが上手かった友人が会長になり、K君と僕は副会長になりました。K君は事務作業が得意だったので事務的な分野を、そして僕は宴会部長を主に務めました。サークルはテニスのレベルは低く、弱かったのですが、当時、80人ほどの部員がいました。テニスの練習時間や試合の連絡を電話連絡網で伝えることがK君の担当でした。
 僕の家は大学から近かったので、電車で1時間半かけて通学していたK君は、1限の授業のある前の日はよく僕の家に泊まりました。僕の部屋で床を並べて寝る時にいろんな話をしました。K君は、中学生の時、お父さんを病気で亡くしていました。K君は僕に親友になってほしいと言いました。僕はK君の親友になりました。
当時、教会長をしていた僕の父も幼い時に父親を亡くしていて、K君と時々話をすることがありました。K君と父は、父親を早く亡くした寂しさを共感し合い、語り合いました。父は小学生の時に父親が病死しており、母親と兄弟はいましたが、小さい頃から心細かったこと。そして尊敬する信心の師匠が父親代わりになって、守られて育ててもらったこと。師匠から、「神様を親のように思っていれば安心になる」と教えられたことなどを話していました。K君はいつしか父のことを慕うようになっていました。
 そして大学4年の就職活動の時、K君はサークルの先輩が就職した大手の建築会社の営業に早々と内定しました。しかし、その後大学の就職課の先生から、ある都内の大学が事務職員を募集しているから受けてみないか、と言われました。就職課の先生は、K君が営業より事務職に向いていると考えていました。その話を聞いてK君は迷いました。サークルの先輩のお世話になって、建築会社の内定をもらっていたからです。そのことを僕に相談してきたので僕は彼に、「お取次とりつぎを頂いてみれば?」と言いました。
 金光教の教会には、悩みなどを神様に申し上げ、神様の思いを伝えてもらう「お取次」というものがあります。
 K君は父にお取次を頂きにいきました。K君は、父が信心の師匠にお取次を頂いて救われたことを覚えていたのです。親にものを言うように神様に縋ればいいんだと。父はしばし神様に祈り、「受けてみなさい」と言いました。K君も本心ではそれを望んでいました。そしてK君は大学の事務職員に合格しました。僕もK君は建築会社の営業より大学の事務職が合っていると思いました。
 しかし先に建築会社の内定が出ていたので、そちらを断らなければなりません。サークルの先輩にお世話になって内定していたこともあり、K君は、「コーヒーを浴びせかけられてもいいから建築会社を断ってくる」と言って出かけていきました。そして、何とか内定を断ることができて、大学の事務職員になりました。
 彼は仕事もよくやりますが、若い時は、冬は毎週末、スキー場へ通うほど活動的でした。根はまじめでコツコツと仕事をするタイプなので着々とキャリアを重ねて、三十数年経った今では、彼はその大学の事務の管理職となり、部下も50人近くを抱えています。僕とK君は今でも時々飲みにいき、好きな鉄道と写真について話します。
 スキーで知り合った奥さんと結婚し、一戸建ての家も構え、お子さん2人も育てました。そして彼は、「あの時、お取次を頂いてなかったら、今の自分はないだろう」と語ります。
 そして彼は今でも、時々、教会に参ってきます。
 さて、信心というものには、計り知れないほど奥深いところもありますが、かといって初めから難しく考え、とても自分のようなものにはできないとあきらめてしまっては何も始まりません。「親にものを言うように、お礼を申し、お願い申しなさい。それで信心になる」と言われています。
 親にものを言うように神様に語るようにすれば信心になる、というのが金光教の信心です。
 さあ、あなたもお近くの金光教の教会を訪ねてみてはいかがですか? 今日もあなたの一日が素晴らしい一日になりますように。HAVE A NICE DAY!

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