●先生のおはなし
「今、何を願うのか」
岡山県
金光教本部
金光孝悦 先生
（ナレ）おはようございます。案内役の大林誠です。今朝は、金光教本部に在籍している金光孝悦さんのお話です。
私たちは何か困った問題にぶつかると、誰でも神仏に助けを求めたい気持ちになるものですね。でもそんな時、私たちは何をどうお願いするんでしょうか。
今日の話し手、金光孝悦さんは、まず問題の性質をよく見ることから始めてみたそうですよ。ではお聴きください。「今、何を願うのか」。
一昨年の夏、若い金光教の先生たちがスピーチするイベントが大阪で開かれることになり、私に出場依頼がありました。
初めは断るつもりでしたが、同じ金光教を信心している同僚から、「神様の願いがかけられているのかも知れないよ。神様のお役に立つ良い機会だと思って出場してみたら」と言われ、悩みはしたものの出場することに決めました。ですが夏が近づくにつれて、私の家庭は経済的にどんどん苦しくなっていったのです。
私は当時、金光教本部のある岡山県で、妻と２人、賃貸住宅で暮らしておりました。家賃や生活費だけでもぎりぎりの暮らしでしたが、ちょうどその時期に車の修理や車検など、大きな出費が重なったのです。毎日をいかに倹約して過ごすか、不安が押し寄せてくる中に、大阪まで行かなくてはならない。旅費は作れるだろうか。宿泊はどうしよう。初めての大阪、せっかくなら、イベントの出場だけでなく、観光もして、ご馳走も食べて楽しみたいと、夫婦で胸を躍らせていたのに、それどころではなくなってしまいました。
暗い気持ちのまま過ごしていたある日、自宅の神棚の前に座り込み、「神様、何とかしてください」と不安を吐き出しました。神様の前でいろいろ考えていると、ふと「神様のお役に立つ良い機会だ…」という同僚の言葉を思い出したのです。
その瞬間浮かんできたのは、「私がこういう状況になることを、神様は初めからご承知だったのではないか」ということでした。「ご承知でありながら、神様は、私に大阪でお話しする機会を与えられた。他に若い先生がたくさんいる中で、神様はわざわざ私を選んだ。神様に選ばれて、神様のお役に立つために、私は大阪に行くのだから、きっと神様が何とかしてくださるはずだ」。そう思えると、なんだか安心感に包みこまれたような、力が抜けていく感覚がしたのです。
私はこの思いを妻に話しました。するとその日を境に、それまでは不安や心配ばかりだった夫婦の会話が、「神様は何を期待してくださっているのかな」「選ばれたのはすごいことかもね」と、だんだんと明るく神様の話ができるようになりました。
そうして妻と楽しく話をしていることに気づいた時、「そうか、心配や不安で悩む時間を頂いたおかげで、夫婦で神様の話ができて、一緒に困難を乗り越えられる夫婦に育ててもらっているんだな」「神様は、夫婦が成長するための経験を下さっている。私たちのことを思っての『今』なんだな」と、今度は「ありがたいなぁ」という気持ちが湧いてきたのです。
「神様が私たち夫婦を思い、願いを掛けてくださっての『今』であるのなら、これ以上、悩んだり不安で考え込んだりする時間は要らないな」と思えました。それからは、「不安な心を改められますように」「夫婦で一緒に、神様の思いに応えられますように」と、日々願うようになりました。
そうしたある日、身に覚えのない郵便物が届きました。開封してみると、何と、大阪の高級ホテルのペア宿泊券だったのです。それは以前、クレジットカードを作った時、自動的にキャンペーンに応募されていたらしく、私は応募されていたことすら知らなかったのですが、それがまさかの当選だったのです。この夏に、しかも大阪で、夫婦で使用できる高級ホテルの宿泊券を頂いた。私には、神様が下さったとしか思えませんでした。そしてさらにイベント当日、主催者側から、旅費を頂けることにもなりました。
全く予想していなかった展開に、ただ畏れ入る思いでした。
私たちは、神様から、「助かってほしい」「幸せになってほしい」という願いを掛けられ、導かれて「今」を生きていると思うのです。だから困難な問題に直面しても、神様が私のために下さっている「今」に、安心して身を任せていきたい。そして、自分の願望を神様に押しつけるよりも、神様の願いを受け止めることに力を入れて、問題に向き合っていきたいと思います。その先には、私たちの想像を超えた、神様が準備してくださっている助かりや幸せが待っている。それが私の実感です。
（ナレ）いかがでしたか。始めは不安だったけれども、これも神様のお計らいだと気づけば、不安が自然と感謝に置き換わっていったといいます。そして神様の願いに素直に応えようとしていくと、そのご褒美なんでしょうか、思いがけないうれしいことも起こってきたという。
私も、いろんな出来事の中に込められた神様の願いに、素直に従っていきたいなあと思いました。それで高級ホテルのペア招待券が当たるかどうかは分かりませんけどね。
神様もお喜びくださり、自分もうれしいようなしるしがきっと現れる。そんな確信をもらえる今朝のお話でした。