何でもご相談下さい


●先生のおはなし
「何でもご相談下さい」

金光教西宮にしのみや教会
西村憲正にしむらけんせい 先生


 「私が今元気に仕事が出来るのは、妻と共に金光教の教会に参拝し、神様に祈り、共に支え合うことが出来たからです」と、今年65歳になる麻川博良あさかわひろよしさんは目を輝かせて語って下さいました。
 麻川さんは、学校を卒業して金属加工会社に入社以来、早朝から深夜まで研究を続け、金属の特殊な微細加工技術を開発し、会社の発展に大いに貢献してきました。麻川さんの長年の研究が公に認められ、創業者の社長が叙勲を受ける栄誉も頂きました。我が国の経済成長と共に歩んできた会社も著しく業績を伸ばしました。
 やがて父親のように慕っていた創業者が亡くなり、新しい社長が就任したころに、麻川さんは意を決して長年働いてきた会社を退職しました。かねてから心に暖めていた自分の会社をおこすためでした。彼が56歳の時でした。
 麻川さんと3人の社員だけという小さな会社ですが、退職金を全てつぎ込み、さらに県から特別融資を受けて設立することが出来ました。麻川さんが長年培ってきた技術の蓄積を中心に、世界中の微細加工部品のデータをインターネットに載せて販売するという、当時としては画期的な営業方法でした。
 ところが会社設立後の4年間、全力を尽くしたインターネット販売ですが、売り上げが伸びないのです。今でこそネット販売はあらゆる分野で急激に増加していますが、当時はインターネット取引が始まったばかりで利用者もまだ少なく、麻川さんの意気込みとは裏腹に、ほとんど収益につながりませんでした。
 いよいよ資金も底をつき、社員の給料も出せないような状態にまで陥りました。銀行からの借り入れは思うに任せず、知人に事情を話し、つなぎの資金を借りて、やっと社員の給与を払うことが出来ましたが、収益がなければ長続きはしません。遂に2人の社員が会社を去り、社長の麻川さんと一番若い社員の2人だけになりました。
 困り果てた麻川さんは、奥さんと共に私の奉仕する金光教の教会へ初めて参拝してきました。麻川さんは、どのようにこの問題に取り組めばよいのか、会社の状況と辛い胸の内を私に語りました。
 私は祈りながら話しました。「あなたは、今仕事が行き詰まってしまったと嘆いておられますが、この世界には行き詰まりはありませんよ。神様の大きな恵みと導きの中に生かされている私たちです。世界は限りなく開かれているのです。お仕事も研究も、多くの人々や、お金や資材など多くのもののお世話になって、させて頂いているのではないですか。今はさぞかし苦しいでしょうが、ここまで取り組むことが出来たことにお礼を申し、ここから一日一日をしのがせて頂けるように神様に一心にお願いしましょう」と、私は話しました。
 その後、麻川さんは、私がお話ししたように、お世話になって今あるということを大切にして、朝目覚めると、神様に今日のいのちを頂いたことをお礼申し、仕事が上手くいくように祈りました。また、亡くなった先代社長の遺影にも手を合わせて祈りました。そして、不足の心を出さずに、仕事のなかに喜びを探していきました。売り上げや給与の支払いについても、麻川さんは奥さんといっしょに教会で神様にお願いしました。奥さんは「必ず神様が道をつけて下さるから大丈夫よ」と夫を励ましました。
 このような取り組みがしばらく続いたある日の夜のことです。麻川さんが車を運転し、高速道路を100キロ近いスピードで飛ばしていた時、一瞬、睡魔が襲いました。ハッと気がついた時は中央分離帯に激突寸前で、とっさにハンドルを切りました。フワーッと宙に浮いたような感じがして車が元に戻りました。「ああ、神様に助けて頂いた!」と、麻川さんは強く感じました。百分の1秒程も、気付くのが遅れていたらと思うと、しばらく胸の動悸が治まりませんでした。麻川さんは心の底から、神様にお礼申し上げました。そしてこの経験を通して、神様の存在と自分が導かれているということを実感したのでした。
 この日を境に、麻川さんの仕事ぶりが変わってきました。助けられた自分のいのちを、仕事をとおして少しでもお役に立たせて下さいという願いが、おのずと生まれてきたのです。インターネット販売で尋ねてこられた顧客に対して、自分に出来ることは「何でもご相談下さい」と、仕事の大小にかかわらず親切に応対しました。
 そういう麻川さんの仕事ぶりに応えるかのように、次々と引き合いが増えてきました。そして麻川さんが心血を注いで開発した微細加工技術に関する取引も徐々に出来ていきました。最近では、東京の大手メーカーとの間で新技術の共同開発をする話が進展し、契約にこぎ着けることが出来ました。やがて会社の負債も順調に返すことが出来るようになりました。麻川さんが奥さんと共に金光教の信心を求め、そこから神様が喜んで下さる仕事になるような生き方に変えることによって生み出された、会社経営の充実発展でした。
 金光教の教祖金光大神は、「商売するというから神は見ている。商売させて頂くという心になれば、神はつきまとってさせてやる」と、仕事に向かう心のあり方を教えています。
 麻川さんは、今日は京都へ、明日は東京へと、毎日席が温まる暇がないほどの忙しい日々を、「何でもご相談下さい。お役に立たせて下さい」と、生き生きと仕事に取り組んでいます。

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