●先生のおはなし
「祈りの中で生かされて」

東京都
金光教常盤台教会
三宅史子 先生
(ナレ)皆様、おはようございます。案内役の岩﨑弥生です。今日は、東京都・金光教常盤台教会、三宅史子さんのお話で「祈りの中で生かされて」をお聴きください。
一昨年の9月、実家の母が79歳で亡くなりました。
実家は、私にとって心から安心できる場所でした。毎年子どもたちを連れて帰り、母と過ごす時間は、何よりの楽しみでした。母もまた、私たちの帰省を心待ちにしており、いつも「今度はいつ帰ってくるの?」と笑顔で聞いてくれました。
16年前、二人目の出産を控えた頃、私は体調を崩し、眠れず、食事も喉を通らず、涙ばかりが出る日々でした。出産後も体調は戻らず、心細さで押しつぶされそうな中、母が熊本から上京してくれ、家事や育児を手伝い、夜中の授乳まで代わってくれました。母はどんなに忙しくても「大丈夫よ」と笑顔で寄り添い、私を励ましてくれました。
「母が来てくれたから、なんとかなる」。その安心感が私を支え、次第に体も心も回復していきました。あの時、母の祈りと愛情がなかったら、私は今ここにいなかったと思います。
そんな大きな存在だった母を亡くし、「これからどうしたらよいのか」と不安に包まれました。もっと話しておけばよかった、もっと一緒に過ごしておけばよかったという後悔の思いがあふれ、涙が止まりませんでした。かつて私は母に、「困った時には私が帰ってくるからね」と伝えていたのに、何も恩返しできなかったという思いが今も胸に残り続けています。
母はいつも、「ありがとう」と言葉にし、人を思う心がとても強い人でした。その一言には、相手の心を包み込む温かさがありました。晩年、年齢とともにゆっくりと変化していく中でも、一人でいる人を見かけると、「そんなところにいないで、こちらで一緒にご飯を頂きましょう。心配しなくて大丈夫だから一緒に頂きましょうよ」と優しく声をかけていたと聞きました。体が弱っていく中にも、お世話をしてくださる方に「ありがとう」と欠かさずお礼を言っていたそうです。人を思い、感謝を示す心は、最後まで母そのものでした。
私はその姿から、長年培われた「人を思う心」と、「感謝を口にする生き方」の尊さを教えられました。なぜ母は自然に「ありがとう」と言えたのか―それは、人のことを思い、祈りを持って生きていたからだと感じています。
私の信じている神様は「天地金乃神様」といいます。そして私たちは「天地金乃神様」を「親神様」と頂いています。天地金乃神様は私たち一人ひとりを「わが子」として大切にしてくださり、「子が親に頼むように、何でも願え」と教えてくださっています。
それは、たとえ実の親がそばにいない方、親との関係が希薄だった方であっても、すべての人が「なんとか助かってほしい」という神様の大きな祈りの中で生かされているということです。私たちの命は、目に見えない祈りに包まれ、今日まで導かれてきたのだと感じます。
母が亡くなって、その祈りに支えられてきた私は、今度は「祈る側」に立ち、他の誰かの幸せや助かりを願って生きていくことが大切なのだと気づかされました。
金光教では、亡くなられた方を「御霊神様」と敬い、その御霊神様に喜んでいただけるように生きることを教えられています。
私は、母を二度死なせないように生きていきたいと願っています。一度目は命が尽きた時。そして二度目は、私の心から母の存在が消えてしまった時です。だからこそ、これからも母の祈りと姿を思い続けて、語り継いでいきたいと強く思います。そうして亡くなった人の想いは、今を生きる私たちの暮らしの中に、確かに息づいていると感じています。
母の祈りに気づいた今、私もまた「ありがとう」を生き方で示し、人を思い、祈る心を持って歩んでいきたいと思います。母の恩を知って、その恩に報いたいと心から思うのです。母の祈りを、他の人へ、そして子どもたちへとつないでいくこと―それこそが、母への一番の恩返しであり、親神さまの御心にもかなう歩みであると信じています。
どうぞ今日も、皆さまお一人おひとりの歩みに、祈りと感謝の心があふれますように。
(ナレ)いかがでしたか。
お話を聞いているだけで、史子さんのお母さんの人柄が、温かさ、優しさを身にまとった方なのだろうと想像できます。その温かさ、優しさは、信仰を土台とした祈りから生まれてくるものと史子さんは、仰っています。その「祈り」という目には見えず、形にも表れにくいもので、手に触れることも、声を聞くこともできなくなったお母さんとこれからもつながっていく、そういう世界があるのだあと、思わされました。
「祈り」と言いますと、「祈ることしかできない」などと言われることがありますが、「祈り」ほど心強いものはないと私も思っています。その思いを込め、今日放送をお聴きくださったあなたが、神様の深い愛情で包まれ、願われていることに気づかれますよう、皆さまお一人おひとりの歩みに、祈りと感謝の心があふれますように、私も心を込めて祈ります。
