受け継がれていくもの


●信者さんのおはなし
「受け継がれていくもの」

金光教放送センター


 自分のこれまでの人生を振り返ってみた時、あの時あのことがあったから今の私がある。その時には良いことと思えず、大変な思いをしたけれども、そのことがあったからこそというものが、皆様にもおありでしょう。
 奈良県にお住まいの布引光枝ぬのびきみつえさんは68歳。光枝さんにとってのそれは、長女恵子けいこちゃんの病気でした。
 恵子ちゃんは、小学3年生の時、遠足の帰り、途中から足を引きずるようにして帰ってきました。そのうちにその足が痛み出しました。そして、お腹にも痛みが出て、何も食べることが出来ません。痛みの原因が分からないまま、その日の夜も痛くて痛くて眠れません。あちこちの病院で見てもらって、やっとそれが血管性紫斑病けっかんせいしはんびょうによる痛みだと分かりました。耳慣れない病名で、いまだにその病気のはっきりした原因は不明だそうです。それに腎臓の病気として残っていく可能性があるというのです。
 かわいい我が子が思いがけなくそんな病気になって、心配で、可哀想でなりません。何とかしてやりたい、と思った時、長い間眠っていた光枝さんの信仰心が呼び覚まされました。昔、親といっしょにお参りして手を合わせていた金光教の教会のことを思い出したのです。
 光枝さんのご両親は、とても熱心に信心されていました。光枝さんも幼いころから両親に連れられて教会によくお参りしていましたが、結婚して親元を離れてからは、足が遠のいていました。お父さんは病気がちでしたが、何かあるたびに、教会に参り、神様にすがり、助けられていたことを思い出しました。
 光枝さんは、近くにある金光教の教会を探そうとしました。すると、郵便配達をしているご主人が、「おれ、見たことあるぞ。八つ波のマークやろ、それ確かに見たことある」というのです。2人で教会を探し回りました。
 ありました。金光教のご紋がある建物が見つかったのです。金光教菖蒲池あやめいけ教会でした。すでに夜11時も回っていましたが、門をたたき、「娘が痛がります。助けて下さい」と先生に訴えました。先生は娘の病気にうろたえる光枝さんの不安を受け止め、「しっかりと心を神様に向け、一つひとつの事柄の上におかげを頂いていきましょう」と言われ、共に祈ってくれました。2、3日、痛がって眠ることが出来ずにいた恵子ちゃんでしたが、その晩は不思議にぐっすり眠りました。
 そんな我が子を見つめながら、光枝さんの不安は和らいでいくのでした。教会の先生を通して今は亡き父の祈りを感じることが出来たのです。
 翌朝、何としても治して頂こうと強い気持ちを持って、恵子ちゃんを連れて病院へ行きました。「即入院です。半年ぐらい入院することになりますよ」とお医者さんから言われました。治療はベッドの上での絶対安静が第一で塩分を控えた食事療法なども行います。
 幼い娘を一人病院に残して、光枝さんは「後にも先にも、この時くらい一生懸命になれたことはない」と今、その時のことを思い返します。入院した次の日から、歩いて40分ほどかかる教会の朝6時のお祈りに参拝して職場へと向かいます。
 仕事を終えると病院へ行き、娘の顔を見て、病院のすぐ近くにある教会にも参拝します。実はこの教会は恵子ちゃんを病院へ連れて行く時、偶然にも車の窓から金光教のご紋が目に入り、「あっ、ここにも金光教の教会がある」と、とても心強く感じたもので、引き寄せられるようにしてお参りしたのでした。
 家に帰ると、改めて菖蒲池教会に参り、先生に娘のその日の様子を報告して、回復を祈ります。そうして家に帰ると、夜の9時から10時近くにもなりますが、それから一生懸命に千羽鶴を折ります。翌朝、折れた分を教会でお祈りをしてもらってから、病院へ持って行き、娘の枕元につるしてある千羽鶴に足していきます。
 この時の光枝さんは、自分に出来る限りのことをしようと願いをかけましたが、ただ教会に参拝して祈ることしか思い浮かびませんでした。仕事との両立は並大抵のことではありませんでしたが、家族の協力を得て、一日、また一日とお参りを重ねるうちに神様が待っていて下さるような喜びを覚えてくるようになりました。
 繰り返し繰り返し同じことを続けて45日。恵子ちゃんもどんなにか早く家族の元に帰りたかったことでしょう。ベッドの上での安静を辛抱強く守って、お医者さんから「半年の入院」と言われていたのが、思いのほか、早く退院することが出来、たくさんのお世話になる中で恵子ちゃんのその病気は完治したのです。
 恵子ちゃんの病気は、光枝さんに両親によってまかれた信心の種を芽生えさせてくれ、信心を支えとした生き方へと導いてくれました。その後、ご主人の喘息やご自身の腰の手術など、さまざまな困難に出会った時にも、神様に心を向け乗り越えることが出来ました。
 「神様にしっかりと抱かれ、神様が敷いてくれた線路の上を安心して歩かせてもらっている。そんな思いがするのですよ」と光枝さんは、話してくれました。
 そして今、その信心の種は、恵子さんにもまかれ、育ち始めています。

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