ねんどのくまさん

●私の本棚から
「ねんどのくまさん」

福岡県
金光教不知火しらぬい教会
池本ひろ江いけもとひろえ 先生


 おはようございます。福岡県にあります金光教不知火しらぬい教会の池本ひろ江いけもとひろえと申します。今朝は、お気に入りの絵本、長野博一ながのひろかずさんの作品『ありがとう』の中から、特に心に残っている場面を、一部抜粋して紹介したいと思います。1983年に金光教徒社から出版されました。
 その前に、この絵本と私の出合いをちょっとだけお話しさせてください。私は、楽しみにしていたはずの子育てが、全く楽しめず、苛立ってばかりの毎日を送っていました。当時4歳だった長女をイライラトゲトゲした言葉で叱ってばかりのある日、実家の両親が「2人で仲良く読んでください」とプレゼントしてくれたのがこの絵本でした。
 主人公は、粘土でできたクマさん。森の中で動物たちが粘土のクマさんを見つけるところからお話が始まります。

* 

「この くまさん かわいいね。いっしょに あそべるといいのになあ。」
1ぴきの りすがそういうと もう1ぴきの りすが
「くまさん あそぼう。」
と ねんどの くまさんに こえを かけました。
すると
ねんどの くまさんの めが ぱちっと あいたのです。「ねぇ きのぼりして あそぼうよ おもしろいよ。」
2ひきの りすは おおはしゃぎです。
りすが こえを かけてくれたので
うごけるようになった ねんどの くまさんも うれしくて
2ひきの りすと いっしょに もりの なかへ
あそびに でかけました。
「とおくまで みえるよ、はやく のぼって おいでよ。」
さきに のぼった りすが したを みると、
ねんどの くまさんは きの ねもとで うろうろ しています。
「どうしたの、くまさんは きに のぼれないの。」

もう1ぴきの りすが ききました。
ねんどの つめが まだ やわらかくて、
くまさんは きに のぼれなかったのです。
「ねんどの くまさんは だめだなあ。」
「つまんないの。」
2ひきの りすが そういうと、とたんに
さっきまで うごいていた ねんどの くまさんが、
ぺたんと すわって、もとのように うごけなくなってしまいました。

そこえ、かわうそが やってきました。
「かわいいな この くまさん、ねえ あそぼうよ。」
かわうそは おもわず ねんどの くまさんに
こえを かけました。
すると
うごけなくなっていた ねんどの くまさんが、また
ぱちっと めを あけて うごけるように なりました。

かわうそと かわで あそぶことに なった
ねんどの くまさんは、うまれて はじめて
みずの なかに はいりました。
ところが、たいへんな ことに なりました。
くまさんの ねんどの からだが
みずの なかで とけてきたのです。
いそいで かわから でなければ。
でも、くまさんの ねんどの からだは
みずに ぬれて ぬるぬるです。
うさぎも やってきて てつだって くれました。

やっとのことで ねんどの くまさんを
きしに ひきあげました。

でも やっと みつけた くまさんの ねんどの あしは、
みずに とけて すっかり ほそくなっていました。

「やっぱり ねんどの くまさんは だめだなあ。」
かわうそが そういって ためいきを つくと
とたんに ねんどの くまさんは また
うごけなくなって しまいました。
「かわいそうに。」
うさぎは こころの なかで そう おもいました。
「くまさん。くまさん。」
こんどは うさぎが ねんどの くまさんに
やさしく こえを かけました。
すると
ねんどの くまさんは また ぱちっと
めを あけて うごけるように なりました。


※ラジオ放送用に変更を加えている箇所があります。表記は原典に基づいています。

 
 いかがでしたか?
 動物たちと粘土のクマさんのやりとりが、そのまま私と娘に重なりました。「子どもの心を、傷つけ、のびのびと動けなくなるような言葉を使っているのかも」と、自分の子育てを見直すきっかけをもらいました。
 あとがきの言葉も、私の心にじんわりとしみこんできました。「人間は、神様から命を授けられ、『神心(かみごころ)』を頂いて生まれた『神の愛し子』」とありました。「命だけではなく、心も神様が授けてくれたもの」。神様と私たちの心の関係を知って、「自分の心も、子どもたちの心も」大切にしようと思うようになりました。
 それからは、神様にお願いしてから娘に声をかけるようにしたり、自分の心が疲れていたり、荒れている時は、神様や周囲の人に頼る子育てに変わっていきました。苛立ったり、心配になった時、神様を頼ってお願いしていくと、狭くなっていた視野を広げてもらえて、神様と一緒に子育てをしているような安心感を得られるようになり、子育てを楽しめるようになりました。
 そして、今、その娘がママとなり、私は、おばあちゃんになりました。懐かしい絵本を引っ張り出して、久しぶりに読んでみると、以前、読んだ時よりも、一層、強く、「心」
というものの尊さを感じています。心がチクチクザワザワした時に、神様と繋がり、子育ての様々な悩みを通して、問題を乗り越える心が育てられきたことを振り返ると、心が、ネガティブな方にも、ポジティブな方にも、さまざまに動くことがとてもありがたいことだと思うようになりました。心は、神様と私たち人間を繋ぐ重要な役割を担っていて、心が動くことは、神様と私たち人間が親子であることの証のように感じられて、愛おしく思えてきたんです。 孫も、これから、喜んだり、怒ったり、心がチクチク、ザワザワすることを体験していくと思います。心の体験をたくさんして神様と出会い、神心を育んでほしいと思います。
 そして、自分の心も、相手の心も大事にできる人になってほしい、と祈りを込めながら、今、孫に読んでいます。神様が、命と一緒に授けてくださった大切な神心を、大事にすることを教えてくれた絵本『ありがとう』。未来に残したい大好きな絵本です。お聞きくださりありがとうございました。

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