『ありがとう』で救われた


●先生のおはなし
「『ありがとう』で救われた」

熊本県
金光教日奈久ひなぐ教会
富永恵とみながめぐみ 先生


(ナレ)おはようございます。案内役の大林誠おおばやしまことです。
 今朝は、「『ありがとう』で救われた」というお話をお聴きいただきます。話し手は、熊本県にある金光教日奈久ひなぐ教会、富永恵とみながめぐみさんです。

 2017年12月、待望の第一子、娘を出産しました。環境や仕事柄 、これまでたくさんの子どもたちと接してきた経験もあったので、自分の子育てもなんとかなるだろうと思っていました。
 しかし、実際には、想像をはるかに超えた大変さに戸惑うことばかりで、私の子育ては、早速、暗く長いトンネルに入ってしまったのです。
 私という人間は、自分のできる範囲のことは一生懸命するけど、苦手なことは徹底して避けてきたという人生でした。何を試してもうまくいかない子育ては、逃げ出したくても逃げ出せない大きな挫折でした。
 それでも、神様に助けていただきながら少しずつ何とかなってきた頃、第二子、息子を出産しました。
 喜ばしい中にも、娘の赤ちゃん返り、極度の偏食、夜泣きが重なり、いつまで続くか分からない負のスパイラルに、私の心は再び、暗く長いトンネルへと入ってしまったのです。
 そんなタイミングで市の3歳児健診があり、保健師さんに悩みを相談すると、娘を保育園に通わせつつ、保育園から週に1回、療育施設へという提案を受けました。
 娘はいろんな面で成長してくれていましたが、思ったことは何でも言葉にしたり、うれしいと興奮して大声や金切り声が出たり、夢中になると周りが見えない特性がありました。そんな娘に対する周りの反応を、私が過剰に気にしてしまい、大声で叱る場面が多々ありました。
 信心をさせていただいて、どれだけ子どもたちの成長に神様から助けていただいているか、頭で理解し、お礼の気持ちももちろんありました。それでも、日々の暮らしの中では、思い通りにいかず、イライラや不満、不安が募り、その状況を受け入れきれず、そこから怒りに変わってしまう自分に幾度となく落ち込んでいたのです。
 そして、いつしか、「これは私の性格なんだから仕方ないんだ」と諦めかけていました。それが昨年の5月までの私です。
 そういう状況の中、夫が、「ありがとうを言い合える家庭作り」という取り組みを始めることにしました。
 私は朝、子どもたちを起こすことも長年の悩みの種となっていたのですが、夫のありがとうを言う取り組みの様子を見て、私自身も「ありがとう」と声に出して取り組むことを始めてみました。そしたら、朝目覚めること、それこそ命があってのことで「神様ありがとうございます」だと思わせていただき、ありがとうを言うことで、今まで気づけなかったことがたくさんあることを分からせていただきました。
 そして、毎朝起きてくれるだけでも「ありがとう」だと思うと、そのことから、私の起こし方が「そうね。眠いよね。起きてくれてありがとうね。学校毎日頑張って偉いね」などと優しい口調で何度も「ありがとう」と言えるようになりました。
 すると、子どもたちがニコニコ顔で機嫌良く起きてくれたんです。驚きました。1回のことかもと、毎朝試してみましたが、結果、毎朝機嫌良く起きてくれるようになったのです。
 そして、それ以上に驚いたことは、「ありがとう」を口にしていた私の心が誰よりもありがたい気持ちになっていたことです。今までは、「思い通りにならないことも、自分の心が育つために神様が下さった『差し向け』として大切に受け入れていくことが大事」だと教えていただいたので、子どもたちの問題も一生懸命受け止めようと努めてきました。しかしそれでは、ただ我慢して受けていることも多く、ストレスが溜まり、いつの間にか腹を立てている自分がいました。それが、「ありがとう」に取り組むようになって、同じ受けることでも、「ありがとう」に繋がるように物事を捉えることで、喜びが伴っていたことに気づかされました。そこから喜ぶことが信心だなと思わせていただき、私にとっては大きな変化でした。
 今では、起こしに行くことも楽しみになり、子どものあらゆる行動や反応全てを愛おしいと思え、自分の心が助かっていることを実感しています。
 取り組み始めてから、2カ月ぶりに会った実家の家族からは、私の変化に「人が違うみたい」と驚かれました。そして、以前より家庭の中に笑顔が増えたのです。
 まだまだ、何事にも「ありがとう」を言う稽古の最中です。けれど、イライラと不満や、不安の日々だった私の心は、同じ状況になっても喜びの心に繋がりやすくなり、長年悩んでいたことへの視点が180度変わるおかげを頂きました。
 だから今、伝えたいのです。皆さんもまず何事にも「ありがとう」を言うことから始めてみませんか。

(ナレ)いかがでしたか。子どもを授かったのも、元気にいてくれるのも、神様のおかげだと、頭では分かっていても、イライラがありがたさを打ち消してしまうことがある。それが子育ての現実ですよね。そんな時、「ありがとう」を声に出して言うことで、神様のおかげを再確認でき、自分の心が和らぐと同時に、子どもさんの心まで和んでいったと富永さんは言われます。
 実体験には説得力がありますね。私は「ありがとう」をどれだけ言えているかなと、考えさせられました。

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