僕と手をつないで



●先生のおはなし
「僕と手をつないで」

金光教徳島南とくしまみなみ教会
岡美栄子おかみえこ 先生


(ナレ)おはようございます。パーソナリティの大林おおばやしまことです。
 今日は、金光教徳島南とくしまみなみ教会、おか美栄子みえこさんのお話です。岡さんは、子育て中の出来事をとおして、神様のお心に触れていかれます。タイトルは「僕と手をつないで」。ではお聞きください。

(本文)今から30年ほど前、長男が3歳になったばかり、次男はまだ1歳に満たない頃のことでした。当時、私たちは仕事で実家の教会から離れ、金光教本部のある岡山県の金光町に住んでいました。
 長男は好奇心が強く、外に出て遊ぶことが大好きでした。ただ、乳児の次男に手が掛かり、あまり一緒に外で遊んでやれませんでした。
 少し内気だった私は親しい友達もおらず、育児にも疲れてか、孤独を感じることが多く、内へ内へと心が向いていました。ある日、小さな長男に向かって、「お母さん、友達がいないの。独りぼっちなの。どうしたら友達できるかな」と言っていました。3歳のわが子が答えてくれるとは思いませんでしたが、心の叫びが思わず出てしまったようでした。長男は少し間を置いて、「お母さん、僕と手をつないでお参りに行ったらいいよ。道を歩いていると、みんなが小さな僕に話し掛けてくれる。そしたらお母さんも一緒にお話ができる」と言ったのです。私は一瞬耳を疑いましたが、確かに3歳のまだ体も小さい長男が、私の目を見て言ってくれたのでした。私は涙が止まらず、この子を抱きしめていました。「ありがとう。そうだね。一緒にお参りに出掛けたら友達できるね」と言っていました。
 初めは長男のことをすごいと思いましたが、だんだんと、これは神様が長男をとおして私に教えてくださったのではないかという気がしてきました。
 その頃私は、夜、育児家事が落ち着いてから一人で金光教本部にお参りしていました。この
鬱々うつうつとした気持ちからどうぞ抜け出させてくださいとお願いさせていただいていると、帰る頃には心が少し落ち着くのです。そこは、神様が優しく包んでくださるような気がして、ほっとできる場所でした。
 そして、実家に電話をして、父に心の内を聞いてもらうこともありました。父は黙って聞いてくれた後、「子どもが元気で成長させていただいていることはありがたいなあ」と言ってくれました。次第に、「子ども二人が元気でいてくれることはありがたい。育児が大変なこと、友達がいないことを不満に思うことにピリオドを打たなければ」と自分に言い聞かせる気持ちになってきていました。
 私は、長男が「一緒にお参りしよう」と言ってくれた次の日から、わが子の小さな手を引いて金光教本部にお参りさせていただきました。すると、道で出会った方が長男に声を掛け、私にも「いつも元気なお子さんですね」と話し掛けてくださいました。そして私も、明日は誰とお話ができるだろうかと、毎日の参拝が楽しみになっていきました。
 金光教には「昨日を忘れ、今日を喜び、明日を楽しめ」という教えがあり、これもまた私の心の支えになりました。それは実家の母が、私が落ち込んでいるのを見るたびに聞かせてくれていた教えでした。この言葉に励まされるだけでなく、母がいつも私のことを祈ってくれているという安心感も重なって、一層心強く思えたのです。
 そしてある日、参拝の帰り道、長男と同じくらいの男の子とそのお母さんに出会い、同じ方向だったので、どちらからともなく話ができました。別れ道に来た時、お互いの家が近いことを知って、子ども達は「また遊ぼうね」と約束していました。それからはお互いの家を行ったり来たり、一緒に参拝したり、誕生会もしたり、バスに乗って動物園に出掛けたり、本当に楽しい時間を過ごせました。私の心も外へ外へと広がっていきました。
 思い返せば、全ては神様に願うことから始まりました。願うことによって、私はこのように変わることができたのです。孤独感や渦巻く悩みを心の中にとどめているだけでは、ますます暗く深く沈んでいくばかりだったでしょう。悩みを祈りに変えて神様に向けていけば、神様は必ず手を差し伸べてくださいます。私の場合、神様は長男の言葉をとおして私を救いへと導いてくださったのでした。
 去年の敬老の日に、孫の手作りの可愛い作品が送られてきて、父親である長男のメッセージも入っていました。「子育ては本当に大変で、お母さんは僕と弟をよく育ててくれたなあと感謝します」と書いてありました。長男も親となり、改めて親の恩を感じることができるようになったのだとありがたく思いました。
 人間を大きく包んでくださっている神様のご恩、そして親への感謝の心を忘れずに生きていきたいと思います。

(ナレ)いかがでしたか。
 3歳の子どもが、落ち込んでいる母親を気遣って、「僕と手をつないでお参りに行ったらいいよ」と教えてくれたという。岡さんは幼いわが子の言葉を、神様からのメッセージと受け止めました。願えば必ず応えてくださる神様の親心、またお父さんお母さんの娘を思う温かさにも包まれて、岡さんは孤独感から救われていきました。
 「人はみな神の愛し子である」と金光教祖は教えています。神様の愛情の中で、今日も一日、喜びいっぱいで過ごしたいですね。

タイトルとURLをコピーしました