●ラジオドラマ「晴れのち晴悟郎」
第1回「晴悟郎誕生」

金光教放送センター
時 現代 7月
所 京都
登場人物
・天地悟郎 (のちの晴悟郎・バイクツーリスト)68歳
・達 吉 (友人)60代後半
・愛 子 (晴悟郎の母・故人)30代
・先 生 (金光教教師)50代
・ナレーター
(鐘の音。街の音)
達 吉:いつ来てもいいなあ、京都ってとこは。
悟 郎:修学旅行に来た時とはえらい変わりようだ。
達 吉:50年も前の話をしてどうなる。あ、古道具の店がある。さ、見てゆこ。悟郎さん。
悟 郎(内心の声):骨董品集めなんて爺臭い。古道具をあさって何になる…あーあ、つまらない…。
(ナレーション)
天地悟郎さんは、今年で満68歳。長年勤めた会社を3年前に定年退職しました。会社人間だった天地さんは、これといった趣味もなく、毎日が空しく、生きる張り合いをなくしていました。そんなある日、妻の勧めで町内会のバスツアーに参加して京都へ来てはみたものの、同年代の達吉さんとも話が合わず、悟郎さんのいらいらは募る一方なのでした。
(街の音。白バイが、通過)
悟 郎:あっ白バイだ! カッコいーい!
達 吉:ただ取り締まりをやっているだけじゃないか。
悟 郎:こんな街中でスピード違反は許せないよ。事故でも起きたらどうする。
達 吉:さ、早く行こう! みんなに遅れちまう…。
悟 郎:(白バイが急停車)おっ、クルッとUターンして、ピタッと止まった。ハハハッ、見事なハンドルさばき。かっこいいなあ。
(ナレーション)
(街の音)翌日、皆と別れて天地悟郎さんが京都の町を一人ブラブラしていると
悟 郎(内心の声):…あれ、ここは母ちゃんが昔…小さな時によくお参りをしてたって教会じゃないかな。…石碑がある。何て書いてあるんだろう…「昨日を忘れ 今日を喜び 明日を楽しめ」…母ちゃんがいつも言ってたことだ…。
愛 子:(エコー)悟郎! 悟郎の「悟」の字は「悟」と書く。それなのにちっとも悟ってないなぁ…。
悟 郎:えっ、どういうこと? 母ちゃん。
愛 子:昨日の失敗は、いくら悔やんだところで、もうどうにもならない。忘れろ! 水に流してなかったもんにしろ。大切なのは今日だ。今日一日をどれだけ大切に、いとおしんで生きるかってことなんだよ。それによってあしたを楽しむことが出来るんだから。
悟 郎:…今日をどう過ごすかで、あしたが楽しめるかどうかが決まる…。
愛 子:今日一日をね、神様がご覧になって、「そうだ! よくやった!」って思って頂けるように一生懸命に生きる…!
悟 郎:…神様が、喜んで下さるように…。
愛 子:そうすれば神様は必ず楽しい、晴れ晴れとしたあしたを用意して下さるんだよ。お前、うちの手伝いもせずに本も読まずただブラブラして…。そんなことじゃ楽しいあしたはやって来ないよ。さっ、早く宿題! 宿題!
悟 郎:…母ちゃん…。
先 生:(お茶をいれながら)ああ、そうですか。あなたのお母さん、この教会にお参りしてはったんですか…。
悟 郎:ええ、この教会の前に来て、何十年振りかで、お袋の言葉を思い出しました。
先 生:ほーう…。お茶、どうぞ。
悟 郎:どうも…。昔、昭和30年代のころ…、おやじは毎日原付バイクに乗って得意先回りをしていました。母は、「事故でも起こしたら」って心配してたようですけど、子どもの私は汗だくになって働くそんなおやじの姿を見て、「カッコいいなぁ」って思ってました。その父親が、亡くなるまで憧れてたのが大型バイクだったんです。おやじの夢を私が、今、叶えてみたい! 全国を回り、何か…何だかよくは分かりませんけれども神様が、 「よくやった!」って喜んで下さることをおやじやお袋に代わって、ただ一生懸命に!
先 生:それはよろしいなぁ。全国津々浦々を巡ってひと様のお役に立つ。どこにでもあなたの助けを必要としている人たちがきっといるはずですから。
悟 郎:そうすれば晴れ晴れとした明日が待っている。おやじも、お袋もきっと喜んでくれるだろうなぁ…。先生! おかげさまで生きがいが見付かりました。私、悟郎というんですが、今日から頭に「晴」という字を付けて「晴悟郎」と名乗ります。じゃ、行って参りまーす!
