お取次を頂いて


●信者さんのおはなし
「お取次を頂いて」

金光教今池いまいけ教会
政後元祁まさごもとき さん


 私は昭和38年に中学時代の同級生と結婚しました。家内は、結婚の話が出た時、参拝していた金光教の教会の先生から、「夫婦一緒に信心をさせてもらえるといいですね」と言われました。私は宗教の自由の時代におかしいと思いましたが、調べてみると、教祖様の実直な生き方に感動を覚え、また教えも素晴らしく、これは本当の宗教だと思いました。やがて、結婚2年後に一人娘を授かりました。
 娘が成長し、短大を卒業して銀行に就職することになりました。1年ほどを経過したある日、娘の様子がおかしいと連絡があり、至急、銀行へ迎えに行くと、娘はぐったりして、疲れ切った様子で大変驚きました。
 翌日、神経科病院で診察してもらった結果、統合失調症ということで、私も家内も驚き、心配と不安で暗い気持ちになりました。通院では治らないと言われ、入院となりました。娘の病気は簡単には回復せず、入退院を繰り返すようになり、次第に私も家内も、治療を続けても一生治らないだろうと思うようになりました。
 しかし、当時の私は商社勤めで、ノルマに頭を悩ませ、夜は接待の連続で、娘のことはすべて家内任せ、病院任せでした。家内は四六時中、心配ばかりしていたと思われ、「叱り叱り育てた私が悪かった」と、自分を責め、次第に家内も安定剤を多量に服用しなければ生活出来ない状態となりました。娘はその弱っていく母親を守らなければならないと思っていたらしく、娘にとっては抱えきれない苦しみであったと思います。
 金光教には色々な願い事を教会の先生にお話して、先生を通して神様に願い、また神様の願いも聞かせて頂く、「お取次とりつぎ」ということがあります。しかし、当時の私たち夫婦は、娘の病気は神様にお願いして治ることはないと思い、真剣にお取次を頂くことはありませんでした。
 10年前に家内が亡くなり、私は娘と2人暮らしになりました。娘は長年の病気で人格が破壊されたのではないかと思われるほど、時に暴れたり、泣き叫んだり、睡眠薬を限度まで多量に飲んでいるのに、ちっとも眠れず、付き合う私も睡眠不足の毎日でした。さらに私は、慣れない家事にも困り、「私がいなくなったら、娘は一人で生きていけるのだろうか?」と考えると心配と不安いっぱいで、意を決して、お取次を頂きました。「私はどうなってもいいですから、娘を助けて下さい」とお願いしました。
 教会の先生は、「あなたが助からなければ、娘さんは助かりません」とおっしゃり、「まず、あなたが神様をしっかりと頂きなさい。娘さんとしっかりと向き合って、あなたが神様を頂いている姿を見せていくことが娘さんも助かることになるのです」と言われました。
 神様をしっかり頂くといってもどうすれば良いか分からず、金光教の本を手当たり次第読んでは、どうあれば良いかを求め、ただただ、朝に晩にお参りして、「娘を助けて下さい」と祈り続けました。
 先生から、「日常の生活の中でしっかりと娘さんと向き合いなさい」と言われて、私は初めて、娘のことを何も知らなかったことに気付きました。娘の言うことも行動も、「困ったことだ」という心配としてしか、映っていませんでした。
 先生は昼夜が逆転している娘に、「朝起きて、朝の光を浴びましょう。そのために、毎朝10時のご祈念に参拝するように」と言われ、連れて行くと、何時間も娘の話に真剣に耳を傾けて下さり、一つ一つに丁寧に答えて下さいました。娘は、「どうせ、自分は病院で死ぬんだ。私なんか生まれてこなければ良かった」と言って、先生にも、「どうせ私を見捨てるくせに」という態度でした。それでも先生は、「このままでは可哀想。娘さんを何としてでも助けたい」と、必死に娘と向き合って下さり、祈り通して下さいました。
 そして先生は、「娘さんは、あなたへの憎しみもあるみたいです。仕事のためとはいえ、お酒の飲み方が悪かったようですね」と言われ、「お酒をやめて、あなたも変わらなければなりません」と厳しく言われました。お酒を飲むと、知らないうちに家内や娘を責めていたことを知らされ、私はお酒をやめ、自分が改まることに取り組みました。
 そんな中で先生は私に、「娘さんは毎日を精いっぱいに生きています。彼女は彼女で、一生懸命に助かりたいと願っているのですよ」とおっしゃいました。私はそんなこと、思ってもみませんでした。私が娘を助けてやらねばならないとのみ思っていたのです。
 娘は、次第にお取次のお言葉の通りに取り組めば、少しずつ何かが変わっていくのが感じられたようでした。自分から進んで参拝するようになり、毎日、お話を聞き、自分の身の回りのことや、時々食事の支度もするようになりました。今では睡眠薬も飲まずに寝られるようになり、私にとっては夢のような、穏やかな生活が出来るまでになりました。
 今、娘は48歳になりましたが、家内の10年祭には霊前に手を合わせ、「生んでくれて、ありがとう」と言ってくれました。私は10年前を思い返し、絶対に治らないであろうと思っていたのに、「神様は本当におられるなあ」と感じて、神様のお働きに、心からありがたいとお礼を申しています。今では、娘は、お医者さんも驚くほどに回復させて頂いています。
 私たちだけではなく、同じように悩み苦しんでいる人たちにも助かって頂きたいと願っています。

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