本当の元気!


●信者さんのおはなし
「本当の元気!」

金光教放送センター


 皆さんは、自分が卒業した小学校や中学校、高校に愛着は持っておられますか? 近年は、子どもがどんどんと少なくなり、学校が廃校になってしまったり、隣の学校と合併したり、という話題をあちこちで耳にしますね。
 学校が無くなる時の式典、閉校式では、ポールに掲げられた旗が下ろされます。いよいよ本当に学校が無くなってしまうという実感が湧いてくる瞬間、その学校を卒業されたPTAの方々の目からは涙があふれる瞬間です。そんな瞬間に何度も立ち会うことになった教育委員長が、今日の主人公です。
 広島県に住む坂田さかたさんは、現在65歳、今年3月に教育委員会の委員長としての職責を最後に、40年を超える公務員生活を終えられました。坂田さんの社会人としてのキャリアは、大学を卒業後、中学校の理科の先生になったのが始まりです。その後、34歳の時、学校から教育委員会へと職場が変わりました。
 教育問題は、皆さんご存じのように、一筋縄ではいかない問題ばかりです。53歳で、教育委員長になってからは、いよいよ様々な問題に自らトップとして臨むことになったのです。
 祖父母の代から金光教の信心をしている家庭で育った坂田さんのモットーは、「いつも元気に!」です。元気な心でいることが家庭や職場を明るくしますから、元気な心を頂けるように、毎日神様にお願いしてきました。
 しかし、自分だけが元気では駄目です。親や家族が病気になると、職場で元気に安心して働くことが出来ません。ですから、親や家族が元気でいてくれることも大切です。そこで、坂田さんは、親や家族への感謝の気持ちを込めて、「親孝行」を仕事の心得とし、職員に指導するようにしました。
 親孝行は、先祖を大切にするということにもつながります。仕事がうまくいかない職員には、「今日はちゃんと先祖に祈ったか─?」と言いました。職員の中には、仕事と親孝行が結びつかずに、いぶかしげな表情を浮かべる人もいましたが、坂田さんは気にしませんでした。親や先祖を大切にする気持ちが、神様から元気を頂く元となり、明るく円満な職場の雰囲気を作るのだと信じていたからです。
 しかし、実際に直面する問題は、なかなか元気にはなれないことばかりです。学校の統廃合問題、保護者と学校との対立、地域の方々や保護者からの様々な要望、注文…。
 学校の統廃合問題では、「学校を潰しに来たんだろ、外の者が勝手なことをするな!」「最初から統廃合ありきで、住民の意見なんて、全然大切にしないじゃないか!」などと激しい口調で詰め寄られます。
 地域の方々のことを考えると、無理もありません。それでも、学校の統廃合問題に対しては、「子どものことを考えれば、少ない人数よりも大人数で教育する方が良い。必ず地域のため、未来のためになる」という、教育委員長としての信念をもって臨みました。中には、坂田さんが先生になって初めて教えた中学校が廃校になり、坂田さんの手でその学校の旗を降ろしたこともありました。
 坂田さんは、そのような教育委員長になってからの様々な問題を、「神様の愛のレッスン」として受け取りました。「神様の愛のレッスン」とは、お参りしている教会の先生から教えて頂いた言葉で、「直面している問題が苦しければ苦しいほど、つらければつらいほど、それは神様が与えて下さった試練であり、その試練を通して、本気で神様におすがりすることを神様が願っておられる」という教えです。神様が自分のことを願って下さっていると思うと、どんな問題でも、不安や心配が無くなり、元気な心で取り組むことが出来るようになるのです。ちょうど家族の問題も重なっており、坂田さんは、ますます本気になって神様におすがりするようになりました。
 坂田さんは教会にお参りし、とにかく自分の胸の内を洗いざらい神様にぶつけ、先生にお話します。神様からすれば、汚い、醜い心かもしれません。それでもいつも教会を出るころには、元気な心になっています。
 坂田さんは、笑みを浮かべながら、「つらい荷物を神様にお預けし、楽しい荷物を我が家、職場に持って帰ることが大切なんです。そうすると、職場や家庭では、すがすがしい心で人に接することが出来ます。これまでは、『から元気』でもいいからと自分に言い聞かせ、元気な心を保つようにしていました。でも、本当に神様とつながっていると、『から元気』が『から元気』ではなくて、本当の元気になっていくんですね。神様から見たら人間はみんな赤子ですから、自分の力で解決しようとしたら駄目なんです。そのことが分かると、しっかりと神様を土台にして生きることが出来るようになりました」と語ります。
 今年3月、公務員として、いよいよ最後の日、職場では退任のセレモニーがありました。「お疲れさまでした」。周りのみんなに声を掛けて頂き、これで全てが終了と感慨に浸る間もなく、最後の一仕事が待っていました。その日の夜、最後の最後の仕事、学校統廃合の説明会がまだ残っていたのです。それも交渉が大変難航している学校でした。
 「神様の愛のレッスンは最後まで続くなあ」と、坂田さんは、元気よく最後の仕事に向かいました。

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