●共に生きる
「いのちの大切さ」

梶山純子 さん
「おじちゃん、おはよう」「おはよう。今日も元気でがんばろう!」
今朝も子どもたちの元気のいい声が、通りから聞こえてきます。
私たち夫婦が働くクリニックの前は、小・中学校の通学路となっていて、夫が10年前から、子どもたちとのあいさつ運動を始めました。こうして、毎朝、子どもたちから元気をもらって、私の一日が始まります。
私は、山口県の日本海側に位置する長門市で、小児科医としていろんな子どもたちを診させて頂いています。
私が、医師になろうと決心したのは、父が産婦人科医として開業していて、赤ちゃんの産声を間近で聞き、患者さんたちと一緒に喜んでいる両親の姿をいつも見ていて、私もみんなが幸せになれるお手伝いがしたいと思ったからです。
私は、物心つくころから、母の手に引かれて、金光教の教会へお参りしていましたが、そんな私たちを見て、父はいつも、「苦しい時の神頼みじゃあダメだ!」と言っていました。当時の父は、「自分で努力して自分自身を高めなければいけん」と威張っていました。
こんな時、私は、「金光様にお参りするのは、『ありがとうございます』と、お礼参りに行きよるんよ! 苦しい時の神頼みじゃないんよ!」と、反論したものでした。
教会では小学生の私に、「鉛筆にお礼を申してから勉強しなさい」と言われ、鉛筆も、天地のおかげの中で作られていることを教えて下さり、お世話になる全てのものにお礼を申すことを教えて下さいました。
また、私が医学部を目指すことをお話しすると、教会の先生は、「天地のおかげの一番の源を勉強してきて下さい」と、おっしゃいました。たとえ、よく効く薬を注射したり、飲んだとしても、血液の流れや、胃や腸で吸収する働きがなければ、薬は効きません。ロボットや人形にどんな高価な注射をしても効かないのです。自分で治す力や生きていこうとする力がないとダメなのです。また、人間は、薬を作ることは出来ても、人間の体や、体の中の様々な働きを作ることは出来ないのです。
しかし、その当時の私は、教会の先生のお話を何となく、ぼんやりと理解していたに過ぎませんでした。
医学部に入学し、心臓、肺、脳など人間の体の働き、一つひとつの細胞の働きは、人間の力ではどうしようも出来ないということ。医学は、病気が治る手助けをしているに過ぎないのだということに気付かされた時に、生命の神秘の偉大なることに感銘を受けました。
その一つは、生命が誕生する時のことです。
女性は一生のうちに約400個の卵子を排卵します。また、男性は1回の射精の中に、5億個以上の精子を含んでいます。精子が、膣から子宮を通って卵管まで到達する道のりは、人間で考えると約6キロメートルにも相当し、幾多の関門をくぐり抜けながら泳いでいくことになるのですが、それをクリア出来るのは約100個の精子だけです。こうして卵子の周りに到達した精子は、最後の力を振り絞り、卵子を取り囲む二重の壁を突き破ろうと必死になります。やがて、選ばれたたった1個の精子だけが卵子の壁の中に頭を入れます。この時がまさに受精の瞬間です。
このようにして、出来た受精卵は、世界にたった一つの生命であり、かけがえのないものなのです。
針の先ほどの大きさの受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら、子宮に着床し育っていき、一人の人間が誕生するのです。
実際に出産に立ち会った時には、生命の誕生に本当に感激し、神様のお力の素晴らしさに涙があふれ出しました。どんなに科学が進歩しても、人間が人間を造ることは出来ないのです。
また、こんなこともありました。ある日の夜、高熱を出した赤ちゃんを連れて、お母さんとおばあちゃんが診察に来られた時のことです。熱は40℃と高熱ですが、母乳も飲めて、顔色も良く全身状態は良好です。おばあちゃんは、高熱で赤ちゃんの頭がどうにかならないかと、心配しておられました。
そこで私は、「今、赤ちゃんは体の中でばい菌と一生懸命戦っています。だから、熱が出ているのですよ。熱を出すことでばい菌たちの勢いも弱まるんです。本当に人間の体は、素晴らしいでしょう! 神様はちゃんと病気と戦えるように体を作って下さっているのです」と、説明しました。
2、3日後、赤ちゃんは熱も下がって元気になり、おばあちゃんも、とっても喜んでおられました。
私は、日々診察に来られた方々に、そして、一人でも多くの子どもたちに、この“いのちの大切さ”を、しっかりお話しするようにしています。
そして子育てに悩むお母さんたちには、子どもと共に、一つひとつ自分も親として育つこと、子どもと一緒に成長していくのだと、お話しします。子育てに悩むのではなく、子どもと一緒に悩み、一緒に育つのだということを…。本当に、「子は宝」です。
診察が終わると、患者さんの背中に向かい、必ず、「お大事になさいませ」と、声をかけます。同時に、心の中で、「診察させていただいてありがとうございます。金光様、金光様、どうぞ患者さんがおかげを頂かれますように」と、お祈りをする毎日です。
これからも、お礼の心を忘れない信心をしていきたいと願っています。そして、私の出来る限り、“生命の大切さ”を伝えていきたいと思います。
