●信者さんのおはなし
「朗読ボランティアに携わって」

金光教放送センター
(ナレ)大阪市にお住まいの津多津子さんは、20年以上にわたり、視力障害者への支援ボランティアグループに参加しています。 図書館などでは、本を朗読し、カセットテープに録音したものを貸し出していますが、津さんは、そのテープを作るための、吹き込みをしています。それ以外にも新聞記事の中から、経済や健康、地域情報、連載小説の情報テープを作っています。
(津)私たちは目が不自由な方々に色々な情報を声で届けるテープ作りをしております。作ったテープは、ダビングして、利用者にお送りする。利用者はそれを聞かれたら返送して下さる。まあ、テープのキャッチボール。そんな形でのお付き合いをさせていただいております。利用者は70人くらいで、テープの本数は1カ月延べ300本ぐらいになります。それ以外にね、外部からの委託を受けておりまして、そのテープ作りもさせていただいています。以上がね、耳でのお付き合いなんですが、その他に、図書館での対面朗読や読書会、また色々な催し、美術展やコンサートへのご案内などね、じかに触れ合う機会も割合たくさんあるんです。
(ナレ)図書館のサービスの一つで、利用者の方が希望される本を1対1で読む対面朗読は、色々な方と出会う機会でもあります。
(津)朝起きたら、世の中が暗闇やったっていう方がね、おられましてね。もう何かすっごい落ち込んでおられて、そういう方がね、図書館で対面朗読をしてるっていうことをお知りになって来られたんですよね。その方の悩み、苦しみをね。「家族にそういう話をしたら、家族も一緒に苦しんでるから、家族には自分の苦しみは言えない」とおっしゃるんですよ。そやから、「ここでやったら、まあまあ聴いてもらえるから」っていうような感じでね。何か対面朗読やのに、そういうことはのけて、ただのお話だけなさるって、そういう場合もありましたね。ほいで、だんだんお話するうちに、ちょっとその何て言うんですか、気持ちがほぐれてこられてね。何とか助かっていただきたいなと思いますものねえ。
(ナレ)時には、利用者の方の心の支えになることもあります。津さんが、この活動に参加されるきっかけは、どのようなことだったのでしょうか。
(津)いやもうねえ、今から20数年前になりますけどね、生活環境がガラッと変わったんですよ。主人の父と主人をね、相次いで見送りましてね。今まで時間に追いかけられた生活してたんですけど、急に時間が余ったんですよ。やっぱりね、その時間の余りいうのが何か索漠としたね、虚しさの広がるね、時間だったんですよ。その中で私自身の中の助かりを求めていた頃ね、ふと目にとまったのが、市の広報に掲載されていた、朗読ボランティア養成講座だったんですよ。それでそこの講座を受けるようになったんです。
(ナレ)朗読し、テープに吹き込む地道な作業は、津さんにとって満ち足りた時間となり、新たな生き甲斐を見つけることができました。その中で、今も心に残る出会いがあったと言います。
(津)ある方がね、やっぱり視力障害の方なんですけど、はっきりもの言われる方なんですけど、「あんたらがボランティアできるのは、私らがおるからやで」って言われたことがあるんですよね。真にその通りだと思いましてね。そやから、人はやっぱり皆さんそれぞれ、お互いに助け合って生きているんだなあっていうことを良く分からせてもらいました。そやからこちらが一方的に与えているのではなくて、相手の方からもたくさんのものをちょうだいしているという感謝の気持ち、それをいつも持っていたいなあと思うんですけど。ほんとに自然にサポートできるようになりたいですね。
(ナレ)代々、金光教の信心をする家庭で育ち、ご自身も信心を受け継ぎ教会にお参りしています。津さんは、この活動との出会いにも、神様のお働きがあったのではないかと振り返ります。
(津)何かあったんでしょうねえ。一生懸命お願いしてしたわけじゃないんですよ。ただ、たまたま、その、ボランティア養成講座いうのが目に付いて、何となく藁をもつかむ気持ちで応募したんですけれど。それからですね、どんどん世界が変わっていきました。
やっぱり神様がね、そうさせて下さったんだなということは、分からせてもらっております。ほんとにもういろんな出会いがあって、あの…、いいですねえ。何かあの…、ありがたいですね。
(ナレ)この活動を始めてから、利用者の方の無事を願うことが、毎日の祈りに加わりました。
(津)私ねだいたい、慌て者なんですよ。走ってから考える方なんですよ。今、教会のね、信心の目標がね、「何をするにも神様にお願いして」ていうのがあるんですよね。私この実践目標「何をするにも神様にお願いして」というのをね、守りたいなと思ってるんです。走ってから考えるでしょ、そやからその前に神様にお願いして、でゆっくりと落ち着いて何でも物事したいんですよ。
音楽会に視力障害者の方をお誘いするんですよ。それは招待して下さる、音楽の財団がありましてね。それに行く時はもう必ずひと月前から「事故の無いように」ってお願いしますね。もう私何にもできない、それだけはお願いしますね。ほいでやっぱり、お願いしといたら、やっぱりちょっと安心ですものね。
(ナレ)出会った人たちの中には、他宗教の信仰を持った方もあり、自分だけが祈っているのではなく、自分も祈られているのだと感じたと言います。そして今日も、津さんは、マイクに向かい、多くの出会いに感謝し、楽しみながら、声を吹き込みます。