私が筋肉痛になったワケ


●先生のおはなし
「私が筋肉痛になったワケ」

兵庫県
金光教清滝きよたき教会 
中村宏子なかむらひろこ 先生


 昨年の夏、私は「日ごろからどれほどの人にお世話になって生きているんだろうか」と思わされる出来事がありました。今日は、その時のことを聴いて頂きたいと思います。

 岡山県にある金光教の本部では、毎年夏に少年少女全国大会という子どもたちのためのお祭りが行われます。その時のイベントの1つに、街中をたくさんの音楽隊が練り歩くパレードがあり、私たち家族もそれに参加するため、近くの教会の方々と一緒に1年間楽器の練習を積み重ねてきました。主人は大太鼓、私はフルートを担当し、2歳の息子と1歳になったばかりの娘はマラカスを振って、家族で参加出来ることをとても楽しみにしていました。

 本部へはパレードの前日から他のメンバーと一緒に車で出かけました。初日は子どもたちも機嫌良く過ごし、順調なスタートに見えました。

 ところが、夜になって息子が突然ぐずりだしたのです。

 「お母ちゃん、ここ嫌だ。お母ちゃんの車に乗っておうちに帰りたい」

 それからは何を言ってもただ泣き叫ぶばかりです。私は仕方なく「お母ちゃんの車を探しに行こう」と外へ連れ出し、息子が納得するまで、真っ暗な道を、抱っこしてひたすら歩き続けたのでした。

 その疲れも癒えないままで迎えた朝は、なんと土砂降りの雨でした。過去、パレードで雨が降ったことはほとんどなく、私たち家族はその考えの甘さから、息子の雨合羽は持ってきたものの、大人用の雨具を全く持ってきていませんでした。宿舎からパレードの出発地点まで、楽器を持って歩いて行かなければなりません。あたふたしていると、周りの方々が気付いて、傘や合羽を貸して下さいました。

 主人は大太鼓の運搬で手いっぱいです。私は娘をおんぶした上から合羽を着せてもらい、またグズグズ言い出した息子を抱っこし、傘を差して、どうにか出発地点にたどり着きました。

 しかし、そこからがまた大変でした。娘は、遅れて駆けつけた母に預けることが出来ましたが、すっかり機嫌が悪くなった息子は「お母ちゃん、抱っこ、抱っこ」としがみついてきます。私たちの出番が来ても、息子は歩こうとしませんでした。

 「今無理に下ろして泣かせたら、パレードが嫌な思い出になってしまう。それよりは、気が済むまで抱っこしてあげよう」

 そう決意した私は、フルートを吹けない分、大声でメロデイーを口ずさみながら息子を抱いて行進しました。すると、誰かがサッと息子に麦わら帽子をかぶせてくれました。雨が当たって目を開けられない息子に気づいて、自分の帽子をかぶせて下さったのです。そのおかげで息子は周りが見えるようになり、音楽に合わせてマラカスを振ることも出来るようになりました。

 沿道には、雨にもかかわらず大勢の方が応援に駆けつけて下さっていました。その声に励まされたのでしょうか、パレードも終盤にさしかかったころ、息子が突然こう言ったのです。

 「僕下りる。マラカスする」

 驚く私をよそに息子は颯爽と歩き出し、最後までしっかりと行進することが出来ました。

 「お母ちゃん、僕頑張ったよ」と誇らしげに言う息子を抱きしめながら、私の顔は雨とうれし涙でぐちゃぐちゃになっていました。

 「本当にありがたいパレードだったね」とみんなで喜び合いながら片づけをし、最後にお礼のお参りをしました。私は神様に、このパレードで親子共に成長させて頂いたことをお礼申し上げました。

 さあ、後は車に乗り込んで帰るだけです。ところが今度は息子が「帰りたくない。まだ遊ぶんだ」と言い出しました。

 泣きながら必死に抵抗する息子を引きずって行く様子は、はた目には人さらいに見えたかもしれません。

 息子は、車に乗ってからも大声で泣き続け、私まで泣きたくなりました。車を運転して下さる方にも申し訳なくて「本当にすみません」と謝ると、「大丈夫ですよ。うちも子どもが小さい時は大変だったから…よく分かります」と言って下さり、その言葉にどれだけ救われたことか分かりません。

 やがて息子は泣き疲れて眠り、私もぐったりして家に帰り着きました。

 目が覚めた息子は「家に帰ってきたぁ」と歓声をあげました。そして、「お母ちゃん、楽しかったなあ」と言うのです。

 私は「何が楽しかった?」と聞くと、息子は「えーとなあ、マラカス!」と、うれしそうに答えました。

 その晩、子どもたちを寝かせた後、私も布団の中で、この2日間を振り返りました。すると、いろんな人の顔が次々と浮かんできました。困っている時に傘や合羽を貸してくれた人、雨に濡れている息子に帽子をかぶせてくれた人、息子が泣き続けても笑顔で運転してくれた人…。本当にたくさんの方々のお世話になり、そのおかげで息子の「楽しかったなあ」という言葉が聞けたのです。

 この2日間だけでなく、毎日毎日、本当にたくさんの人のお世話になって、子どもたちが育てられ、私も母親としてお育て頂いている…。神様がそのことを教えて下さった気がして、ありがたくてありがたくて、涙が止まりませんでした。

 翌日、私の両腕はものすごい筋肉痛になりました。でも、その痛みと共に、私は神様からお礼の心を教えて頂きました。

 お世話になって生きている分、少しでも周りの人のお役に立てるよう、私も子どもたちと共に成長させて頂きたいと思います。

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