夫ががんになりました


●先生のおはなし
「夫ががんになりました」

富山県
金光教富山とやま教会
三浦德代みうらのりよ 先生


(ナレ)おはようございます。案内役の大林誠おおばやしまことです。今日は金光教富山とやま教会の三浦德代みうらのりよさんのお話です。タイトルは「夫ががんになりました」。ではお聞きください。

 令和3年の秋、夫が突然吐血をし、近くの病院に緊急入院をしました。「深刻な病気でなければいいな」と祈っていましたが、悪性の胃がんと診断され、大学病院で治療してもらうことになりました。
 詳しい検査を進めていくうちに、肝臓に転移していることが判明しました。医師から、「手術はしないで、すぐに抗がん剤治療を始めます」と告げられ、頭が真っ白になり、言葉が出てきませんでした。インターネットで調べると、夫のは転移しやすいがんで進行性が早く、5年生存率が10数パーセントと書かれていました。
 以前から何度も「タバコをやめて」とお願いしていたのに、夫はずっと喫煙をし続けていました。「あれほど言っていたのに」と、タバコをやめてくれなかった夫を責める気持ちも湧いてきました。
 でも、「医療は日進月歩だし、神様、金光様にお願いして、その10数パーセントに入れていただこう」と気持ちを切り替え、1カ月の間に入院治療1回、通院治療2回を1クールとする抗がん剤治療を受け始めました。
 私は、夫ががんになって、それまで当たり前と思っていたことが、決して当たり前でないことにたくさん気づかされました。とりわけ、体の働きの素晴らしさを改めて感じています。
 例えば、「おなら」を出すのもすごいことで、肛門に近づいてきたものが固体か気体かを瞬時に判断して、おならをするかどうかを体が判断するそうです。おならが出るのは恥ずかしいなあとか、困るなあと思ったりしますが、そういう働きをきちんと整えてくださった上でのことなのです。
 しかし、そんな素晴らしい体を頂いておりながら、そのことに気づかず、お礼を言うどころか、病気になると不平に思ってしまうお互いではないかと思います。
 夫のがんに直面し、様々な情報に触れてつらくなることも多いのですが、例えば、「睡眠はただ寝ているだけではなく、その間に脳では様々な情報を整理したり、内臓ではいろいろな修復作業がなされているそうだよ」などの話を夫としては、2人で「すごいね」と感動します。私たちの体の中では、目には見えないけれども、たくさんのとてつもない働きが、いろいろとなされていることが分かってきました。
 夫はがんという厳しい病を抱えましたが、そのおかげで、私たち夫婦は、体の中の病気を治してくださる働きを実感するようになりました。また、体のことを知れば知るほど、体に愛おしさを感じ、しみじみと感謝の思いが湧いてきます。そして、夫も私も自分の体を大切に、と心掛けるようになりました。
 そしてまた、他の方々の体のことも大切にさせていただきたいと、よりいっそう思うようになりました。
 夫が入院中は、「コロナ禍」で家族も面会を禁じられていましたが、夫は毎日、電話で体調や治療のことを話してくれました。
 夫と同じ部屋にいる50代半ばのがっちりした方は、2年前にがんが見つかり、手術を受けたそうです。その後、順調に回復していましたが、肝臓と肺に転移しているのが見つかり、夫と同じような抗がん剤治療を受けるようになった、とのことでした。
「これから、がんと共に生きる生活を続けていくんですね」と、顔を見合わせ、苦笑いしたそうです。そして、抗がん剤治療を受ける前に血液検査があり、白血球の数が足りないと治療が延期されるのですが、その「投薬スキップ」について、夫は、「いつも元気な心で、笑顔にあふれた生活をさせていただくと、免疫力が高まり、白血球も増えるそうですよ」と話し、その方が退院される時にも、「共に、いつも笑顔で生活させていただきましょう」と確かめ合ったそうです。
 前の教主金光様は、「だれでも、心の底から実意に、すべての人、すべてのものを愛し、大切にするという、神様のような心があれば、自然にいつでも笑顔というものがにじみ出てくるものです」と、教えられています。
 日々、体と神様のお働きにお礼を申し上げ、自然に笑顔がにじみ出てくるような生活を心がけ、夫やがん治療をされている方々がみな治療を無事に受けられ、回復されますようにと祈らせていただいています。

(ナレ)いかがでしたか。三浦さんご夫婦は、病気をとおして、神様からいのちを頂いていることのありがたさを改めて確かめ合い、お礼を言いながら治療に努めておられます。
 実は私、一時、三浦さんのご主人と一緒に仕事をしたことがあるんです。年間計画を立てる時に、ご主人は自分の予定表を私に見せながら、「ほら、来年の予定が12月まで埋まってきた。これを見ると、ありがたいなあと思うんだ。神様がここまでは使ってやるぞと命を保証してくださっているように思えてね」と話されたことがありました。
 働くことができるのは神様のおかげを受けてこそ。これは決して当たり前ではないんですね。今日も元気に、神様に使っていただきましょう。

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