かんべむさしの金光教案内5 第5回


●第5回
「かんべむさしの金光教案内5」

金光教放送センター


 おはようございます。「かんべむさしの金光教案内」、最終回の今朝は、主として金光教の教典と教祖さんの伝記から、佐藤さとう範雄のりおという先生のお話を、させていただきます。
 佐藤先生は幕末時代、備後びんごの国のりょうという村で生まれ育ちました。今は広島県福山ふくやまの一部ですが、当時は農村地帯でした。そして明治の初め頃、16歳の時に大工さんを志して、棟梁とうりょうのところに弟子入りしました。と同時に、学問が好きだったので、夜学にも通って勉強されたんだそうです。
 私、初めてこの話を読んだ時、「へえっ。明治の初めに、備後のような地方の町にまで、夜学が出来てたのか」と、感心しました。前に、自分にとって教典や伝記は、幕末から明治時代のことが分かる、おもしろい本だと申しましたが、これもその事例の一つです。
 そして佐藤範雄先生、縁があって、備中大谷びっちゅうおおたにの金光様の教えも知られたんですが、その時、驚いたことがありました。大工さんですから、当時はもちろん現在でも、家を建てる時の方位や方角、また棟上げ式の日柄なんかも、気にして選びますね。ところが金光様は、「それは迷信だ」と教えておられるという。
 「方位方角や日柄に、善し悪しはない。どこのどんな場所でも、すべて神様のお土地なんだから、ここに家を建てさせていただきますと前もってお断りし、事故や間違いが起きませんようにと、よくお願いしてから、かからせてもらえば、神様は守ってくださる」…。
 当時としては常識破りの教えですが、佐藤先生、方位方角や日柄には疑問を感じておられたらしくて、非常に納得されたんです。そして、明治9年に初めて教祖さんのもとへ参った時には、「一心に信心せよ。大願成就たいがんじょうじゅさせる」と言ってもらえました。
 仕事に関しては佐藤先生、ひだり甚五郎じんごろうのような名人になりたいと、大きな願いを抱いておられましたから、そのことだと思って喜ばれたんです。しかし実は、教祖さんはそのあと、「人を助ける身となれよ」とも言われてた。大願成就は、その面でのことだったんですね。
 ちなみに、人にはそれぞれ、自分にも自覚できてない進路、人生の道筋があるように思えることがありますね。私にしても、学生時代には、作家になりたいとは思ってませんでしたし、まして中年になってから金光教の信者になるなんて、考えてもいなかった。偶然と言えば偶然ですが、その偶然の重なりが、いつしか必然の道筋になっていく。これはやっぱり、神様のなさることかなあと、そう思ったりもするわけです。
 で、佐藤範雄先生もその後、教祖さんから何度か、「今の仕事をやめて、人助けの道に入りなさい」と言われてたんですけど、聞かずに大工さんを続けておられました。そしたらある日、仕事の現場で続けさまに、大けがしかけたり、死にかけたりするほどの事故に見舞われました。さすがに佐藤先生も、それを神様からの戒めだと感じられて、それでついに大工さんをやめて、別の「大願成就」の道筋に入られたんですね。
 そしてこの佐藤範雄先生、人助けに励まれ、出身地の御領に教会も開かれましたが、それとともに明治33年、それまで神道の管轄下にあった教団が、金光教として独立する時にも力を尽くされました。政府の神道本局というお役所から質問状が発せられて、その記録を見るとおもしろいですよ。
「完全なる宗教は、宗教として必ず完全なる世界観を要す。金光教の世界観は如何いかに」、「地球の回転は、物理学の原則以外に神の勢力を認むるや」、「肉体と霊魂の関係及び人生死後の観念如何いかに」などなどなど…。
 その回答書を作るのは大変だったでしょうけど、いかにも明治時代らしくて、地球の回転についての質問なんか、私は思わず笑っておりました。
 また佐藤範雄先生は、若い人たちの教育にも、大きな力を注がれました。明治27年に御本部に神道金光教会学問所がくもんしょを作られ、それが発展して、金光中学校という学校も出来ました。最初は、古い民家を借りて授業をしてたそうで、校長も兼務されてた佐藤先生、「学校は豚小屋だが、そこから優秀な人物を出す」と、生徒たちを励ましておられたそうです。
 そして、その流れは現在も広まっておりまして、岡山県浅口あさくち市に金光学園、大阪府内に関西金光学園という学校法人があります。金光学園は中学高校の一貫教育校を運営してますし、関西金光学園のほうは、中学2校と高校3校があって、兵庫県赤穂あこう市の関西福祉大学も運営しております。すべて男女共学で、もちろん誰でも受験できます。
 余談ですけど、高校のうちの一校が、時々高校野球でニュースになったりする、金光大阪高校です。私は、大阪市内にある玉水たまみず教会という教会に通わせてもらってますが、金光大阪の野球部の選手たちが、必勝祈願に参って来ることもありまして、みんなやっぱり、背が高くて、大きな体をしてますねえ。
 はい。というわけで、「かんべむさしの金光教案内」、5週にわたって、お聞きいただきました。機会がございましたら、またいつかお話を。ありがとうございました。

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