神様と繋がる


●先生のおはなし
「神様と繋がる」

金光教飯田いいだ教会
金光貴子こんこうたかこ 先生


 金光教でお祭りさせて頂いている神様を天地金乃神てんちかねのかみ様と言います。この神様は、「天地の間に生きている人間は皆、神のいとし子である」と言われる神様です。私たち人間は皆、この天地金乃神様のお恵みとお働きの中に生かされて生きています。
 私の奉仕する教会に、ヨシコさんという女性がお参りになっています。ヨシコさんがお参りするようになったのは、教会に電話をしてこられたことがきっかけでした。
 「実は、最初、教会に電話した時は、とても怖かったんです」。ヨシコさんは後になって、そんなふうに話してくれました。実際、初めての時は、「もしもし」という声を聞いただけで電話を切ってしまったそうです。
 私は、「神様があなたを助けようとして電話を繋げて下さったのですよ」とお話しました。
 最初の電話から2週間ほどして、ヨシコさんは初めて教会にお参りされました。車でも2時間以上掛かる道のりです。
 ヨシコさんが悩んでおられたのは、まもなく定年を迎える仕事のこと、職場の人間関係のこと、自分の健康のこと、そういった事柄でした。
 ヨシコさんは、苦しい心の内を、それこそせきを切ったように打ち明けられました。「もう、どうしたらいいか分かりません…。死んでしまいたいと思うくらいです…」。そんなふうに、涙ながらに、話し続けられました。
 私は、「よくお参りされましたね。大変な中、毎日休まずに真面目に仕事をされていて偉いですね」と言わせて頂きました。すると、「私、初めて人に褒められました。仕事の話をしても愚痴ばかりだから、またそれかと言って誰も私の話を聴いてくれませんでした。私の話を聴いてくれたのは先生だけです」と言われました。こんなふうに言葉をやりとりして、気が付けば1時間以上が経っていました。
 その日以降、そのつらい出来事を毎日毎日、電話とメールで伝えて来られました。
 「職場の同僚にあいさつをしても自分だけ無視される」
 ヨシコさんは、耐えられない苦しみや悲しみをメールに乗せて伝えてこられました。私はその都度ヨシコさんに、「大切なのは今日一日ですよ。とにかく今日一日のことを神様にお願いし、一つひとつおすがりしながら乗り越えさせて頂きましょう。仕事中でもたまらなくなったら、『神様、神様』と心の中で言わせて頂けば、神様があなたに付いていて下さいますよ。私もご祈念させて頂きますから」と返信させて頂き、ヨシコさんのことを神様にご祈念させて頂きました。
 誰しも、つらいことや悩み事があれば、周りの人に愚痴の一つも言いたくなります。しかし、それを、神様に聴いて頂くつもりになれば随分違うと思うのです。その違いは、雑草を地面の上から刈るか、地中にある根から引き抜くかほどの違いがあります。人に話しても、その難儀の草は根が残っているので、またすぐに生えてきてしまい、つらく苦しくなるものですが、 神様に聴いて頂けば、難儀は根っこから引き抜かれ、しんどいものを引き取って下さいます。
 ヨシコさんは、「神様、神様」とお願いしながら乗り越えさせて頂き、「先生、一日、一日ですよね」と言われ、頑張って仕事をされました。
 三カ月ほどが経ち、そんなヨシコさんに転機が訪れます。
 以前から仕事を変わりたいと思ってはいたものの、「定年前のこの歳ではどこも取ってくれませんから絶対に無理です」と諦めておられたヨシコさんでした。ところが、思いも寄らないところから声を掛けられ仕事を変わることになったのです。
 新しい職場は、家賃も食費もいらない住み込みの仕事でした。彼女は、生活するにも精いっぱいだったため、家賃や食費、光熱費などの生活費が浮くことはとても有り難いことでした。また、今までの介護の仕事は力仕事のため、身体的にもとてもつらく、全身が痛み、マッサージやハリ、点滴にも通っていましたが、その悩みも全くなくなり、長年の肩こりも治ったとお礼を言われました。おまけに、20年来、悩まされていた不眠症も快方に向かっていると、このことも喜んでおられました。
 決して不眠症が完全に治ったわけではありません。それでも私は、「神様にお願いして休ませて頂き、例え夜中に目が覚めても、その時間まで眠れたことを神様にお礼を申し上げていきましょう」とヨシコさんに話しました。「ありがとうございます、やってみます」と話すヨシコさんはうれしそうです。
 新しい職場は定年もなく、ずっといてくれていいからと言われているそうで、彼女にとっては本当に願ってもない職場に就職させて頂くことが出来ました。
 今でもヨシコさんはメールで、電話で、願い事や悩みを伝えてこられます。月に1回ほどは、2時間の道のりを車でお参りにもなります。
 そして、いろんな出来事の中に、良かったことを見つけては、「これは神様のおかげですね。感謝しなければ」そんなふうに、よく言われるようになりました。
 まだまだ世の中には難儀で苦しんでいる方がおられます。人間は神様のいとしい子どもであって、いつも神様にお守り頂いていると安心出来ている方は、ほんの一握りです。
 これからも私は彼女を含め、たくさんの方の悩み苦しみを聴かせて頂き、その人たちの助かりを神様に願わせて頂きたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました