世界の平和を祈る


●平和
「世界の平和を祈る」

金光教片江かたえ教会
山田金次やまだきんじ 先生


 おはようございます。今朝も穏やかな気持ちに包まれて目覚めさせて頂き、有り難いことです。
 私は、大正12年生まれで、昨年の4月10日に満90歳、卒寿を迎えさせて頂きました。私たちの年代は、中学校で軍事教練を受け、成人すれば軍隊に入隊する時勢でした。中には中学校卒業前に軍隊に志願する人たちもおりました。
 私が21歳の時、第二次世界大戦の戦局が厳しくなった折、昭和19年1月10日に召集を受けました。第一線出陣の部隊に入隊するや、直ちに武装準備を終えて、両親との面会が許され、別れを告げ、早々、同月20日の朝、大阪を出発いたしました。
 朝鮮半島を北上し、1週間掛けて中国中部の南京なんきんに到着いたしました。翌日から、揚子江ようすこうを船で3日間掛け、九江きゅうこうという地で幹部候補生の試験を受けました。
 私は、その試験に合格し、歩兵砲隊に配属になりました。皆に助けられ、6カ月間の教育を受けて、ちょうど入隊以来1年目の昭和の20年1月10日、南京にある陸軍士官学校歩兵砲隊に入学しました。
 その後、私は安義あんぎという地で歩兵砲隊第2小隊長として、初年兵の教育と地域の警備、治安の維持に努めました。安義の地区には水の豊富で奇麗な安義川が流れており、歩兵砲隊はその川辺に兵舎があり、水に恵まれておりました。
 農村では大切な池も多くありましたが、水道、電気が整備されておりません。夜はランプの明かりの生活で、飲料水はドラム缶に砂と細かく砕いた炭を交互に入れて、川や池の水をろ過し、沸かして飲んでおりました。その作業を村の大人も子どもたちと一緒に珍しそうに見に来ておりました。
 洗い物、洗濯はみな川や池です。また各家庭には風呂がありませんでした。お金に余裕のある人は温泉へ行きますが、一般の人たちは川や池の水を沸かして体を拭くのです。それも女の子が優先されます。男の子は川や池で体を拭くんです。冬は出来ません。我々がドラム缶で風呂を作るのも珍しそうに見に来ておりました。
 しかし、そのころ、中国軍は米軍の援護の下、その戦力ははるかに我が日本軍を上回り、かつ米空軍の戦力は目を見張るものでありました。日本軍も多くの死傷者が出る戦況となりました。
 その戦禍は、戦う日本兵だけでなく、一般の中国人の皆さん、特に高齢者、子どもたちの数多くの犠牲者が出たことは、実に悲惨な出来事でした。
 また、内地では、大都市の大空襲での多くの犠牲者があり、特に広島・長崎が原子爆弾による被害で、それはそれは多くの人たちが尊い命を亡くされました。
 そして、8月15日、日本国が経験のない無条件降伏をして、終戦となりました。
 終戦後、私たちの部隊は、中国軍の要請で、そのまま安義の地に駐留し、周辺の警備と治安の維持を続けておりました。
 昭和20年11月、いよいよ中国軍が進駐して任務を委譲し、兵器・弾薬・馬・食料を渡し、住み慣れた安義の地を出発して、他の場所に移動して留まることになりました。
 中国軍の要請により、堤防工事など復員時まで続行しました。工事は中国人の方と一緒にするのですが、いつしか村の人たちとも打ち解けていました。一緒に作業をした人や村の人たちからも慕われ、敵対する者同士とは到底思えませんでした。
 昭和21年3月、共産党軍と国防軍との内戦の兆しが生じた5月19日、復員命令を受けて、3泊野営、4日目の23日、九江に到着しました。
 揚子江を船で下り、南京から貨物列車で上海に到着。所持品検査を受け、6月29日、待望の内地にやっとの思いで、無事に帰国を果たしました。
 この事実は、ひとえに神様のお働き、両親のお祈り添えがあればこそと感謝の気持ちで、日本の大地を踏ませて頂き、無事に帰還出来た喜びで胸がいっぱいでした。一人息子を戦地に送る両親の気持ちを察すると万感の思いが込み上げてきました。
 しかし、初年兵で共に出発した戦友の大半が第一線で尊い命を無くしました。
 私は、軍隊生活は2年7カ月でしたが、その間、戦地で実践的な軍事教育を受け続けました。第一線には出陣しませんでしたが、戦地で戦友を失ったり、色んな出来事を見聞きしてまいりました。
 「誰しも神様から同じように授かったいのちなのに…」と思うと心が痛みます。
 戦争ほど、愚かな、そして、悲惨なことはないと思います。特に、高齢者や子どもたちが犠牲になることが多いのが実態です。それが、今日も世界のどこかの国々で起こっております。実に悲しいことですね。
 私は、日々神様に世界の平和を祈り続けております。そして、まず、身近な家庭から不和のないように家族中親切にし合い、仲良く心が一つになって、言い争いのなきよう、物事をこらえるよう努めることが大切です。
 まず、家庭から世界へと平和の成就を願わせて頂いております。
 ありがとうございます。

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