●天地は語る
第4回「先生、オレオレ 実です」
金光教放送センター
ナレ 「四季の変わりは人の力におよばないことである。物事は時節に任せよ」
これは、金光教の教祖、金光大神の教えの一つです。今日はこの教えについてのお話です。
聞き手 先生よろしくお願いします。
先 生 こちらこそよろしくお願いします。
聞き手 今日、ここへ来るまでの道で蛙が鳴いていたんです。ああ、蛙の鳴き声って久しぶりだなあって思いながら、今年も夏がやってくるんだなあって、とっても嬉しくなったんです。
先 生 そうですねぇ。ある人がね、この季節の移ろいのときに一番神様を感じるって言ったんですよ。神様ってね、目に見えないからなかなか実感できないものだけれど、寒い寒いと思っていたのに、ある日、日差しが柔らかくなっているのを感じたり、暑い暑いと思っていても、ふと空を見上げると秋の雲になっていたり…そんな時は「神様ありがとうございます」と思わずつぶやいてしまうと言っていましたが、本当に何とも言えず、うれしくありがたいものですね。
聞き手 はい、こればっかりは私たちの力ではどうしようもないことですものね。ですから先生、今日の教えにある「四季の変わりは人の力におよばないことである」というのはよく分かります。じゃあ、それに続く「物事は時節に任せよ」というのはどういうことなのですか、先生。
先 生 それはね、私たちが出会う様々な出来事の中には、先ほどの四季の移り変わりのように、私達にはどうしようもないこともありますよね。だから神様のお働きを得て、やがて願いとすることが成就しますようにと、神様にお願いしてお任せする。そして、その時がやってくるのを、焦らず心配せずに待ちましょうということなんですよ。
聞き手 はあ、そういうことなんですか。まあ、そうですよねえ。何でも神様にお任せすればいいんですよねえ。私達の力って小さなものですものねえ…。
先 生 おや、何かあったのですか?
聞き手 …実はこの間教え子と出会ったんです。
先 生 それはそれは、久しぶりでうれしかったでしょう。あなたが小学校の教師をしていた時の教え子だから、今はもう…。
聞き手 高校二年生です。私が家の前を掃除していると「先生」と言うから、振り返ってみると、何だか大きな高校生が突っ立って「俺です、おれおれ」って。
先 生 はは、何かオレオレ詐欺みたいですね。
聞き手 そう言われてみればそうですね。でもその時はもう訳分からずにポカーンとしていると「俺、実です」って言うんです。「えーっ、あの実君? だって実君ってこんなに小さかったんだよ、えーっ」なんてびっくりして。でもよく見たら顔は小さい頃のままなんですよね。久しぶりに楽しく話しました。
先 生 よかったですね。
聞き手 ええ。その実君が帰りがけにね、ふと「先生、俺、サッカー部に入ってんねん。練習は厳しいけど、レギュラーになりたいから毎日学校行ってるし、遅刻もしてないでえ」そう言うんです。
先 生 ほう、あなたが知っている実君は、そんな子じゃなかったんですか?
聞き手 ええ、ついつい朝寝過ごしたと言っては学校を遅刻したり、休んでしまう。多分夕べ宿題ができてないかなあ、なんて時はやっぱり学校に来れないことが多くて、あの頃は毎朝起きた途端「今日は実君来るだろうか…」って、一番に思い浮かべる、そんな子でした。
先 生 その実くんが高校では毎日学校に行っている。すばらしいことですね。
聞き手 はい、私もよかったなあと思ったのですが…実君と別れてから、何だか気持ちが変わってきて…。
先 生 どういうように。
聞き手 なんとか実君に学校に慣れてもらおう、毎朝学校に来てもらおうと、私何度も実君の家に行ったり、みんなで話し合ったりしました。でも十分な成果を挙げられなかったんです。私だけじゃなく、その次の先生も、また次の先生も、中学の先生も、みんな実君に登校してもらおうと、それは大変な努力をされていました。
先 生 あなたも毎朝学校に行く前に教会に来て、子どもたちの事を祈っていましたね。
聞き手 はい、だんだん学校に慣れてはきてくれたんですが、それでも休みがちで…。
先 生 先生方みんな努力されてたのに…つらかったでしょうねえ。
聞き手 何とか学校へ行ってほしいなあって、実君が卒業してからもよく先生たちと話していたんです。だから高校休まずに行けてよかったなあと…それでいいんです。いいんですけど…高校に行ってクラブに入ったから、もう休んでないって、結局私達のしたことは何だったんだろうって、ちょっと寂しくなったんです。
先 生 そうかなぁ、でもね、私には「学校に毎日行ってる」と言った実君の言葉、とても心に響きます。実君はそれをあなたに言いたかったんだなあって。実君もとっても学校へ行きたかったんだなあって。それにあなたがずっと神様に祈っていたように、それぞれの先生方が実君のために苦心し、努力してくださってることもきっと分かっていた。でもね…。
聞き手 はい。
先 生 花でもね、いくら土だ、肥料だ、水だと用意して与えてみても、すぐには咲かないでしょう。花の咲く時期を待たないといけないんです。
実君も今まで接したたくさんの先生の努力、あなたの祈り、そして、自分の学校へ毎日行きたいなあという思いがあって、その上に日々を重ねて、つまり時節を頂いて初めて今大きな花が咲いた、学校に行くことができたんですよ。
聞き手 …そう言われれば、う~ん…実君、私にその言葉を言いに来てくれたんですかね。
先 生 きっとそうですよ。
聞き手 分かりました。何だかちょっと嬉しくなってきました。
先 生 そりゃあよかった。自分でも考えこんで悩んだり、苦しんだりするよりも「自分たちにできることはいたしました。あとはどうぞ神様お願いいたします」と神様のお働きを信じてお任せする。それが大切なんですね。
聞き手 はい。先生、今日はありがとうございました。
先 生 いいえ、こちらこそありがとうございました。
ナレ 「四季の変わりは人の力におよばないことである。物事は時節に任せよ」
今日はこの教えについてのお話でした。